広島県がん登録情報からみえるがん医療の地域差:診断のための医療圏移動の現状

目的 全国がん登録は,がん登録等の推進に関する法律(平成25年法律第111号)に基づき,がん医療の質の向上,がん予防の推進,情報提供の充実,がん対策を科学的知見に基づき実施するため,がんの罹患,治療,転帰などの状況を把握し,分析することを目的として実施されている。本研究では,広島県がん登録情報を集計,解析することにより,患者本位のがん医療に関する提供体制の現状と課題を明らかにし,広島県のがん対策を充実させるための施策の基礎資料として役立てることを目的とした。方法 全国がん登録に登録されている,2013年から2017年にがんと診断された広島県内の新規届出者141,195人を対象とした。がん登録の...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 70; no. 9; pp. 554 - 563
Main Authors 梯, 正之, 恒松, 美輪子, 松山, 亮太, 梅本, 礼子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 15.09.2023
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.22-078

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Summary:目的 全国がん登録は,がん登録等の推進に関する法律(平成25年法律第111号)に基づき,がん医療の質の向上,がん予防の推進,情報提供の充実,がん対策を科学的知見に基づき実施するため,がんの罹患,治療,転帰などの状況を把握し,分析することを目的として実施されている。本研究では,広島県がん登録情報を集計,解析することにより,患者本位のがん医療に関する提供体制の現状と課題を明らかにし,広島県のがん対策を充実させるための施策の基礎資料として役立てることを目的とした。方法 全国がん登録に登録されている,2013年から2017年にがんと診断された広島県内の新規届出者141,195人を対象とした。がん登録の届出項目のうち,分析に使用した主な項目は,部位,診断日,年齢,発見経緯,進展度,患者住所医療圏,診断医療機関医療圏,初回治療情報であった。診断時の受療医療圏を把握するため,自医療圏・他医療圏の受療割合を算出し,自医療圏外に移動する人の特徴を探るため,変数増加法による多重ロジスティック回帰分析を実施した。結果 患者居住地と診断医療機関が同じ患者の割合(診断時医療圏完結割合)を算出した結果,地域差が認められた。受療移動の有無に影響する因子を検討した結果,性別,部位,進展度,医療圏は有意に影響していた。とくに,医療圏の広島西,広島中央のオッズ比が高値を示した。診断医療施設医療圏におけるがん医療水準の評価が可能となる部位別進展度別の初回治療法の実施割合が把握できた。結論 広島県がん登録情報を活用してがん患者の受療動態を把握することは,広島県がん対策推進計画の分野とされている「患者本位のがん医療の実現」がん医療の均てん化に向けての現状・課題を整理する上で有用である。標準治療の遵守率などがん医療水準を評価できる手法として活用できる可能性も提示されている。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.22-078