バーンアウトおよびワーク・エンゲイジメントの観点から分析したコンビニ受診と医師の疲労との関連性

目的 過重労働による疲労は医師の地域からの撤退を招く。病院側の対策や住民側の意識改革を行った事例ではこうした問題の改善に成功した報告がされており,病院レベルでの対策が必要とされる。医師の疲労防止のために病院や住民側が出来ることには,昨今話題となっているコンビニ受診の問題があげられる。この問題は比較的新しく,医師の疲労との関連性を科学的に検証した研究は十分に成されていない。そこで我々はバーンアウトおよび労働意欲(ワーク・エンゲイジメント)の観点から,尺度を用いて医師の疲労とコンビニ受診との関連性を検証した。 方法 医師の過重負担が予想される人口10万対における医師数が全国平均以下の都道府県で,人...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 62; no. 9; pp. 556 - 565
Main Authors 森, 美穂子, 森松, 嘉孝, 松本, 悠貴, 石竹, 達也, 星子, 美智子, 久篠, 奈苗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2015
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.62.9_556

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Summary:目的 過重労働による疲労は医師の地域からの撤退を招く。病院側の対策や住民側の意識改革を行った事例ではこうした問題の改善に成功した報告がされており,病院レベルでの対策が必要とされる。医師の疲労防止のために病院や住民側が出来ることには,昨今話題となっているコンビニ受診の問題があげられる。この問題は比較的新しく,医師の疲労との関連性を科学的に検証した研究は十分に成されていない。そこで我々はバーンアウトおよび労働意欲(ワーク・エンゲイジメント)の観点から,尺度を用いて医師の疲労とコンビニ受診との関連性を検証した。 方法 医師の過重負担が予想される人口10万対における医師数が全国平均以下の都道府県で,人口が多く24時間型社会が浸透していると考えられる中核市および特例市から200床以上を有する病院を44病院抽出した。政令指定都市に関しては人口差が大きくなることが予想されたため今回は除外した。各病院につき 3 人の医師(内科系,外科系,小児科各 1 人)をランダムに抽出し計132人に質問紙を配布した。質問紙はコンビニ受診に関するアンケート,ワーク・エンゲイジメント尺度である UWES,バーンアウト尺度である MBI-HSS を使用した。 結果 42人から回答が得られ有効回答率31.8%であった。時間外受診のうちコンビニ受診と思われる患者の割合は中央値 5 割であった。コンビニ受診で困っているかという問に対しては,61.9%の医師が困っていると回答した。困っていないと答えた医師からは,病院と地域との連携がとれていることを示す内容や,病院によって大きく異なり前勤務地では大変だったといった内容の意見がみられた。検定結果ではコンビニ受診の対策を行っていない病院に勤めている医師では,対策を行っている病院に勤めている医師に比べてバーンアウトの主症状である情緒的消耗感が有意に高かった。また,情緒的消耗感が重度であることへの有意なオッズ比も示され,年齢・性別で調整後および年齢・性別・診療科・当直頻度・当直時の睡眠時間で調整後も有意な値が示された。 結論 コンビニ受診の対策を行っていない病院では,医師がバーンアウトを起こしやすい可能性が示された。病院側は医師のバーンアウトを防止するためにコンビニ受診の対策を行っていく必要性があり,地域医療を支える医師を守るために受診者および行政も含めた地域全体での取り組みが今後必要となって来ることが考えられる。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.62.9_556