マルチキナーゼ阻害薬の治療効果によりがんゲノム検査の解析成功を困難にした甲状腺乳頭癌の1症例

進行甲状腺がんの薬物治療でも遺伝子変異に紐づく薬剤の使用が可能となり,コンパニオン診断システムであるオンコマインDxTTが保険収載されたことで,がんゲノム検査が急速に普及しつつある。すでに薬物治療が開始されている症例における検査はアーカイブ検体を用いる場合と新たに採取した組織を用いる場合がありうるが,後者では薬物治療による修飾が入りうる。今回われわれが経験したのは甲状腺乳頭癌の60歳台男性である。多発転移に対しレンバチニブによる治療を4年行い,右上腕筋間の結節を採取したところ,病理学的に癌細胞を有する組織は11mmの結節の中の3mm程度のみであった。提出切片(5μm)5枚ごとにHE標本(2μm...

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Published in日本内分泌外科学会雑誌 Vol. 40; no. 3; pp. 189 - 193
Main Authors 正木, 千恵, 天野, 高志, 伊藤, 公一, 加藤, 良平, 杉野, 公則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内分泌外科学会 2023
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ISSN2434-6535
2758-8785
DOI10.11226/ojjaes.40.3_189

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Summary:進行甲状腺がんの薬物治療でも遺伝子変異に紐づく薬剤の使用が可能となり,コンパニオン診断システムであるオンコマインDxTTが保険収載されたことで,がんゲノム検査が急速に普及しつつある。すでに薬物治療が開始されている症例における検査はアーカイブ検体を用いる場合と新たに採取した組織を用いる場合がありうるが,後者では薬物治療による修飾が入りうる。今回われわれが経験したのは甲状腺乳頭癌の60歳台男性である。多発転移に対しレンバチニブによる治療を4年行い,右上腕筋間の結節を採取したところ,病理学的に癌細胞を有する組織は11mmの結節の中の3mm程度のみであった。提出切片(5μm)5枚ごとにHE標本(2μm)を1枚作製し,癌細胞を有するプレパラートのみを確実に提出し,解析成功の結果を得た。本症例の経験から,薬物治療後のがんゲノム検査には治療による修飾が加わり検査を困難としかねないため,注意を要することが示唆された。
ISSN:2434-6535
2758-8785
DOI:10.11226/ojjaes.40.3_189