喫煙習慣と肺および胃,大腸がん検診受診の関連

目的 第二期がん対策推進計画の柱として,がんの早期発見とたばこ対策の推進がある。しかし,我が国のがん検診受診率は総じて低く,また喫煙率も高い。本研究は,がん死亡リスクの高い喫煙者のがん検診受診状況を把握するため,喫煙習慣と肺・胃・大腸がん検診受診の関連,さらに 1 日の喫煙本数およびブリンクマン指数(BI)と各がん検診受診の関連を検討した。 方法 2011年に大阪市住民(25~64歳の男女)を対象とした社会生活と健康に関する横断調査を実施した(有効回収率:52.4%)。40~64歳の2,016人(男性966人,女性1,050人)について,喫煙習慣,喫煙本数および BI と肺・胃・大腸がん検診受...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 63; no. 3; pp. 126 - 134
Main Authors 伊藤, ゆり, 濱, 秀聡, 宮代, 勲, 田淵, 貴大, 中山, 富雄, 松永, 一朗, 福島, 若葉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2016
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.63.3_126

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Summary:目的 第二期がん対策推進計画の柱として,がんの早期発見とたばこ対策の推進がある。しかし,我が国のがん検診受診率は総じて低く,また喫煙率も高い。本研究は,がん死亡リスクの高い喫煙者のがん検診受診状況を把握するため,喫煙習慣と肺・胃・大腸がん検診受診の関連,さらに 1 日の喫煙本数およびブリンクマン指数(BI)と各がん検診受診の関連を検討した。 方法 2011年に大阪市住民(25~64歳の男女)を対象とした社会生活と健康に関する横断調査を実施した(有効回収率:52.4%)。40~64歳の2,016人(男性966人,女性1,050人)について,喫煙習慣,喫煙本数および BI と肺・胃・大腸がん検診受診の関連について,男女別に多変量調整ロジスティック回帰分析を行った。 結果 現在喫煙者の肺がん検診受診率は男女ともに50.0%を超えていたものの,各がん検診において,現在喫煙者の受診率は非喫煙者と比較して低かった。喫煙習慣,喫煙本数および BI と各がん検診受診の関連を検討した結果,男性の現在喫煙者は,非喫煙者と比較して胃および大腸がん検診を有意に受診しておらず,オッズ比はそれぞれ0.71(P=0.036),0.67(P=0.012)であった。さらに男性では,1 日の喫煙本数20本以上および BI600以上の現在喫煙者は,3 種すべてのがん検診を有意に受診しておらず,非喫煙者を基準として20本以上の現在喫煙者のオッズ比は肺0.61(P=0.009),胃0.61(P=0.009),大腸0.59(P=0.004),BI600以上の現在喫煙者は肺0.55(P=0.006),胃0.62(P=0.028),大腸0.56(P=0.006)であった。女性では,大腸がん検診受診との間に有意な関連が得られ,非喫煙者に対する1日の喫煙本数20本以上の現在喫煙者のオッズ比は0.39(P=0.004),BI400以上の現在喫煙者のオッズ比は0.51(P=0.020)であった。 結論 喫煙者は非喫煙者に比べてがん検診を受診しておらず,とくに男性においては,喫煙本数が多い者,BI が高い者でその傾向が強かった。喫煙者は検診を受診しないといった意味でもがん死亡リスクが高いと言える。がん死亡リスクの高い者が多く存在する検診未受診者に対してがん検診受診を促進すると同時に,健康やがんについて考える機会である「検診の場」を利用して,喫煙者を対象とした禁煙指導をあわせて実施・推進するべきだと考えられた。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.63.3_126