首都直下地震におけるDMAT派遣支援アプリケーションの作成および医療機関の被災予測
首都直下地震は,近い将来発生する可能性が極めて高いといわれている甚大災害である.本研究では以下の2点を目的とした.まず1点は,首都直下地震の発災初期において,あらかじめ発生する可能性が高いいくつかの震源,震度において被災状況を推定し,これらのデータから,災害についての情報が極めて乏しい状況下で到達可能かつ被災を免れて使用可能な災害拠点病院を抽出し,救援に向かうスタッフが到達できる経路を選出することが可能な医療支援ソフトウェアを開発し実用化すること,さらに2点目は,このソフトウェアを用いて首都直下地震の医療機関の被害状況を推定し,救援に必要なDMAT(Disaster Medical Assis...
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| Published in | Japan Journal of Medical Informatics Vol. 37; no. 2; pp. 55 - 67 |
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| Main Authors | , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本医療情報学会
2017
Japan Association for Medical Informatics |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0289-8055 2188-8469 |
| DOI | 10.14948/jami.37.55 |
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| Summary: | 首都直下地震は,近い将来発生する可能性が極めて高いといわれている甚大災害である.本研究では以下の2点を目的とした.まず1点は,首都直下地震の発災初期において,あらかじめ発生する可能性が高いいくつかの震源,震度において被災状況を推定し,これらのデータから,災害についての情報が極めて乏しい状況下で到達可能かつ被災を免れて使用可能な災害拠点病院を抽出し,救援に向かうスタッフが到達できる経路を選出することが可能な医療支援ソフトウェアを開発し実用化すること,さらに2点目は,このソフトウェアを用いて首都直下地震の医療機関の被害状況を推定し,救援に必要なDMAT(Disaster Medical Assistance Team)数や,あらかじめ決めておくことが可能な人的,物的資源の集積場所の選定などのDMAT派遣計画を立案するための基礎データを作成することである. まず「GIS(Geographic Information System)連携アプリケーションの作成による南海トラフ巨大地震の医療機関の被害想定作成およびDMATによる急性期医療対応計画策定」1)において作成したソフトウェアに首都直下地震の被災予測データと被災状況を背景地図として表示するなどの機能追加を行った.さらにこのソフトウェアを用いて首都直下地震発生時に想定される医療機関の被災状況や火災発生状況,患者搬送に影響する周辺の交通状況につき検討を行った. 首都直下地震DMAT支援ソフトウェアは当初の計画通りの機能を実現できた.首都直下地震のうち首都機能に影響が大きい都心南部直下地震の場合,被災地では20.5%の医療機関が使用不能となり,約50,000床の病床が使用不能となると予測された.これに対し,周囲の通行障害や火災などで被災地の災害拠点病院150施設中10施設前後は搬送不能となる可能性が示された. 喪失病床に加え,内閣府では新規重症患者25,000人の治療が必要と予想しており,これを搬送先として使用可能な災害拠点病院140施設でまかなうのは難しく,SCU(広域搬送拠点臨時医療施設:Staging Care Unit)の投下,DMATの救援,新規重症患者および被災医療機関に入院していた患者の遠距離搬送が必要であることが明らかとなった.一方,発災初期に患者搬送を行うのが難しい地域があるという結果も得られており,「籠城」が可能なように医療機関を強靭化し,医療資源を効果的に利用するために臨機応変にDMATの配置を行うことが必要であることが示された. |
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| ISSN: | 0289-8055 2188-8469 |
| DOI: | 10.14948/jami.37.55 |