訪問歯科診療において新製義歯が使用にいたらなかった要因の検討

訪問歯科診療の対象となる高齢者のなかには,新製した義歯を装着せず旧義歯を装着し続けたり,あるいは義歯そのものを使用しなかったりする者がいる。本研究では,訪問歯科診療において,新製義歯の適応症例と判断し,義歯を作製したものの,その後の使用にいたらなかった要因を検討することを目的とした。 対象は訪問歯科診療で義歯を新製した患者108名とした。調査項目は,年齢,性別,既往歴,要介護度のほか,咬合支持域,義歯の使用状況などの口腔内の状態,および新製義歯の使用状況とした。新製した義歯を上下顎別に,「新製義歯使用あり」と「新製義歯使用」の2群に分け,各因子の比較を行った。また,年齢,性別,義歯使用経験およ...

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Published inRonen Shika Igaku Vol. 32; no. 3; pp. 365 - 372
Main Authors 藤田, 拓, 江頭, 留依, 内藤, 徹, 水谷, 慎介, 國廣, 眞佐子, 松下, 哲也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年歯科医学会 2017
Japanese Society of Gerodontology
Subjects
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ISSN0914-3866
1884-7323
DOI10.11259/jsg.32.365

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Summary:訪問歯科診療の対象となる高齢者のなかには,新製した義歯を装着せず旧義歯を装着し続けたり,あるいは義歯そのものを使用しなかったりする者がいる。本研究では,訪問歯科診療において,新製義歯の適応症例と判断し,義歯を作製したものの,その後の使用にいたらなかった要因を検討することを目的とした。 対象は訪問歯科診療で義歯を新製した患者108名とした。調査項目は,年齢,性別,既往歴,要介護度のほか,咬合支持域,義歯の使用状況などの口腔内の状態,および新製義歯の使用状況とした。新製した義歯を上下顎別に,「新製義歯使用あり」と「新製義歯使用」の2群に分け,各因子の比較を行った。また,年齢,性別,義歯使用経験および要介護の有無を調整因子とし,ロジスティック回帰分析を行った。 上顎88症例,下顎83症例を検討したところ,上顎では7例(8.0%),下顎では7例(8.4%)が新製義歯の使用にいたらなかった。新製義歯を使用しなかった者において,義歯の使用経験がない者の割合は,上顎では71.4%,下顎では85.7%と高い割合を示した。ロジスティック回帰分析の結果,「義歯の使用経験がない」ことは,「新製義歯を使用しないこと」と上下顎ともに有意に関連していた。 訪問歯科診療において義歯を作製する際,義歯の使用経験がないと,新製義歯を使用しない可能性が示唆された。
ISSN:0914-3866
1884-7323
DOI:10.11259/jsg.32.365