悪性グリオーマの最新治療とprecision medicineの未来

悪性グリオーマは最も難治な悪性新生物の1つである. 手術+放射線+化学療法を標準治療とするが, 十分な治療効果を期待できるものではない. 特に中枢神経系は血液脳関門に守られることから化学療法の効果が減弱する. テモゾロミドが標準治療薬とされるが, 手術+放射線に比して生存期間中央値を2カ月程度伸ばすに過ぎない. 多くの癌種の治療に大きな変革をもたらした分子標的治療もことごとく失敗しており, 腫瘍の空間的・時間的多様性が注目される. また一方で, 血液脳関門による薬剤の病変到達性の問題が再度フォーカスされている. Precision medicineも大きな期待を集めているが, パネル検査が1度...

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Bibliographic Details
Published in脳神経外科ジャーナル Vol. 32; no. 3; pp. 148 - 153
Main Author 齋藤, 竜太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本脳神経外科コングレス 2023
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ISSN0917-950X
2187-3100
DOI10.7887/jcns.32.148

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Summary:悪性グリオーマは最も難治な悪性新生物の1つである. 手術+放射線+化学療法を標準治療とするが, 十分な治療効果を期待できるものではない. 特に中枢神経系は血液脳関門に守られることから化学療法の効果が減弱する. テモゾロミドが標準治療薬とされるが, 手術+放射線に比して生存期間中央値を2カ月程度伸ばすに過ぎない. 多くの癌種の治療に大きな変革をもたらした分子標的治療もことごとく失敗しており, 腫瘍の空間的・時間的多様性が注目される. また一方で, 血液脳関門による薬剤の病変到達性の問題が再度フォーカスされている. Precision medicineも大きな期待を集めているが, パネル検査が1度しかできないこと, エキスパートパネルで推奨された治療があった場合も, 大多数の症例で患者申し出医療など試験的な治療に頼らざるを得ない問題点がある. そもそも腫瘍に遺伝子異常があり, それに対する薬剤があったとしても脳腫瘍には効果が薄い可能性も知られている. 悪性グリオーマ治療成績の改善には, ウイルス治療, 中性子捕捉療法, convection-enhanced deliveryなど薬剤投与など, あらゆる新規治療手段を動員する必要があると考える.
ISSN:0917-950X
2187-3100
DOI:10.7887/jcns.32.148