血栓と血流との相互作用を考慮した血栓形成数理モデルの構築~大動脈解離症例への適用

下行大動脈以下に解離が限局するStanford B型大動脈解離では,薬物療法などの保存的治療が第一選択になる.偽腔の血栓化状態は患者の予後に影響するため,偽腔の血栓化を予測できれば,最適な検査・治療計画の立案に繫がると期待される.本研究では血栓形成数理モデルを構築し,偽腔の一部で血栓化した大動脈解離症例一例に適用することで,モデルの妥当性について検討した. 流れの停滞を要因とする静脈血栓の形成機序をもとに血栓形成の数理モデルを構築した.概略すると,流れの停滞領域で血液中を漂う休止血小板が活性化し,低せん断速度領域で活性化血小板同士が結合することで結合血小板が生成されるモデルになっている.これら...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual61; no. Abstract; p. 276_1
Main Authors 小宮, 賢士, 今田, 修多, 氏原, 嘉洋, 木村, 直行, 杉田, 修啓, 中村, 匡徳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2023
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual61.276_1

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Summary:下行大動脈以下に解離が限局するStanford B型大動脈解離では,薬物療法などの保存的治療が第一選択になる.偽腔の血栓化状態は患者の予後に影響するため,偽腔の血栓化を予測できれば,最適な検査・治療計画の立案に繫がると期待される.本研究では血栓形成数理モデルを構築し,偽腔の一部で血栓化した大動脈解離症例一例に適用することで,モデルの妥当性について検討した. 流れの停滞を要因とする静脈血栓の形成機序をもとに血栓形成の数理モデルを構築した.概略すると,流れの停滞領域で血液中を漂う休止血小板が活性化し,低せん断速度領域で活性化血小板同士が結合することで結合血小板が生成されるモデルになっている.これらの血小板の輸送は移流拡散方程式で表現した.また,血栓が血流に与える影響を粘性係数と流体抵抗力の増加で表現し,ナビエストークス方程式を解くことで血流と血栓の相互作用を考慮した. 結果として,真腔は血栓化していないにも関わらず,偽腔の一部表面にて血栓が発生しているという実症例と類似した状態を表現できた.また,偽腔背面側に血栓が発生している一方で,真腔と偽腔の境目(フラップ)側には血栓がないという状態も表現できた.その後,偽腔が血栓によって閉塞していく過程が見られた. 以上より,構築した血栓形成数理モデルを用いたシミュレーションにより大動脈解離における偽腔の血栓化を予測できる可能性があることが示唆された.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual61.276_1