認知課題実行時のFlow強度を評価する脳波指標の検討
Flowとは、人がある活動に完全に没頭し充実感や満足感を得られる状態である。これまでの脳機能イメージング研究により、Flow状態中に認知制御に関わる脳部位が賦活することや、実力に見合った適切な難易度条件下での作業中に前頭頂葉外側部の活動が増加することが明らかになっている。しかし、Flowの強度を生体信号から客観的に評価する方法論は十分に確立されていない。本研究ではFlowの強度を反映する脳波指標の探索を目的として、健常若年成人11名を対象に、6つの難易度の認知課題(テトリス)を行っているときの左右の前頭部、中側頭部、中心部の合計6チャンネルの脳波を計測した。被験者は3分間のテトリス課題後にFl...
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Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual61; no. Abstract; p. 263_1 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2023
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
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ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual61.263_1 |
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Summary: | Flowとは、人がある活動に完全に没頭し充実感や満足感を得られる状態である。これまでの脳機能イメージング研究により、Flow状態中に認知制御に関わる脳部位が賦活することや、実力に見合った適切な難易度条件下での作業中に前頭頂葉外側部の活動が増加することが明らかになっている。しかし、Flowの強度を生体信号から客観的に評価する方法論は十分に確立されていない。本研究ではFlowの強度を反映する脳波指標の探索を目的として、健常若年成人11名を対象に、6つの難易度の認知課題(テトリス)を行っているときの左右の前頭部、中側頭部、中心部の合計6チャンネルの脳波を計測した。被験者は3分間のテトリス課題後にFlowの度合いを評価するアンケートに回答し、それに基づいたFlowスコアを算出した。難易度とFlowスコアの間には逆U字の関係が、難易度と課題中の左中側頭部における脳波δ波のパワー値の増減率(Power ratio: PR)の間にはU字の関係がみられた。また、Flowスコアと右中側頭部を除く5チャンネルの脳波δ波のPRとの間には有意な負の相関がみられた。本研究の結果は、高いFlow状態であるほど脳波δ波強度が抑制されることを示しており、今後このような指標を用いてFlow状態を定量的に評価することが可能となれば、効率的な作業や学習の実現、教育、リハビリテーションへの応用につながると考えられる。 |
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ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual61.263_1 |