シン・肝小葉の3Dコンピュータモデル

肝小葉はグリソン鞘とそれに連なる結合織に囲まれた径約2㎜の区域とされており(古典的肝小葉)、辺縁に門脈トライアッド、中央に肝静脈の分枝(中心静脈)が位置する。しかし、胆道系に着目した「門脈小葉」(Mall, 1906)や血流に着目した「肝細葉」(Rappaport, 1954)も提案されており、概念の混乱がある。他方、肝臓と同じ内肺葉性の外分泌器官である肺の小葉構造の定義は明解で、細気管支と肺細動脈が中心に、肺細静脈と小葉間結合織が辺縁に位置しており、肝小葉とは血管配置が逆になっている。演者は形態形成過程にもとづいた肺のコンピュータモデルを構築してきた。今回、肺と肝臓の発生学的類似に着目して、...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 189_2
Main Author 北岡, 裕子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual62.189_2

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Summary:肝小葉はグリソン鞘とそれに連なる結合織に囲まれた径約2㎜の区域とされており(古典的肝小葉)、辺縁に門脈トライアッド、中央に肝静脈の分枝(中心静脈)が位置する。しかし、胆道系に着目した「門脈小葉」(Mall, 1906)や血流に着目した「肝細葉」(Rappaport, 1954)も提案されており、概念の混乱がある。他方、肝臓と同じ内肺葉性の外分泌器官である肺の小葉構造の定義は明解で、細気管支と肺細動脈が中心に、肺細静脈と小葉間結合織が辺縁に位置しており、肝小葉とは血管配置が逆になっている。演者は形態形成過程にもとづいた肺のコンピュータモデルを構築してきた。今回、肺と肝臓の発生学的類似に着目して、肝実質の構造機能単位として新たな概念を提案し(シン・肝小葉)、そのコンピュータモデルを作成した。  シン小葉は古典的肝小葉の頂点と中心が逆転した構造で、複数の細葉(シン細葉)の集合からなる。1個の小葉に1本の門脈枝が対応し(小葉門脈枝)、その分枝が各々の細葉に血液を供給する。シン細葉はRappaportの肝細葉の半分に相当する。 コンピュータモデルでは、1個のシン小葉は18面体と6面体のシン細葉が交互に4個ずつ配列して空間を充填する。個々のシン細葉は径40μの類立方体のユニットの集合(6~10万個)で、ユニットは8個の肝細胞、中央の毛細胆管、辺縁部の類洞からなる。個々のユニットが連結して毛細胆管による胆汁の排出経路と類洞による血流路が生成される。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.189_2