急性虫垂炎に起因すると考えられた鼠径ヘルニア非合併の鼠径部皮下膿瘍の1例

30歳台,男性。右鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に当科を受診した。右鼠径部に鶏卵大の腫瘤を認め,血液検査では炎症反応の上昇と,随時血糖が400mg/dLと高値だった。CT検査で右鼠径皮下から鼠径管に連続する約3.5cmの膿瘍を認め,近傍には虫垂と思われる索状物を認めたことから,急性虫垂炎の炎症波及による皮下膿瘍と診断した。まずは未加療だった糖尿病の治療を行い,皮下膿瘍は経皮的にドレナージを施行した。その後,虫垂炎の再燃を契機に手術が必要と判断し,待機的な腹腔鏡下虫垂切除術を施行する方針とした。手術所見では明らかな鼠径ヘルニアは認めず,外側鼠径窩に癒着した虫垂を認めた。癒着を剝離し虫垂は根部で切除した...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 44; no. 6; pp. 803 - 806
Main Authors 小林, 慎二郎, 磯村, 香介, 柴田, 真知, 小泉, 哲, 井田, 圭亮, 土橋, 篤仁, 大坪, 毅人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2024
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.44.803

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Summary:30歳台,男性。右鼠径部の有痛性腫瘤を主訴に当科を受診した。右鼠径部に鶏卵大の腫瘤を認め,血液検査では炎症反応の上昇と,随時血糖が400mg/dLと高値だった。CT検査で右鼠径皮下から鼠径管に連続する約3.5cmの膿瘍を認め,近傍には虫垂と思われる索状物を認めたことから,急性虫垂炎の炎症波及による皮下膿瘍と診断した。まずは未加療だった糖尿病の治療を行い,皮下膿瘍は経皮的にドレナージを施行した。その後,虫垂炎の再燃を契機に手術が必要と判断し,待機的な腹腔鏡下虫垂切除術を施行する方針とした。手術所見では明らかな鼠径ヘルニアは認めず,外側鼠径窩に癒着した虫垂を認めた。癒着を剝離し虫垂は根部で切除した。術後の経過は良好で膿瘍の再燃なく経過している。鼠径ヘルニアを伴わず,虫垂炎の炎症が鼠径管を経て皮下に波及するまれな病態を経験したので文献学的考察を加えて報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.44.803