機械的腸管前処置により重篤な高マグネシウム血症をきたした直腸癌の1例

症例は78歳の女性。直腸癌の精査中に酸化マグネシウム内服開始となるも,約1年間検査延期を繰り返した。手術の方針となり,腸閉塞所見を認めなかったため,術前に機械的腸管前処置(mechanical bowel preparation:以下,MBP)としてクエン酸マグネシウムとピコスルファートナトリウムを投与したところ,高マグネシウム(Mg)血症による意識障害,呼吸抑制ならびに徐脈が出現した。緊急手術による腫瘍切除と残便排出を行い,術後血液透析の実施で救命し得た。左側結腸癌術前のMBPは術中の視野確保や汚染軽減のために広く行われているが,閉塞所見がない症例でも腸管内圧の上昇により閉塞性腸炎をきたし,...

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Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 539 - 542
Main Authors 諸橋, 一, 松本, 駿太郎, 横山, 和樹, 坂本, 義之, 鍵谷, 卓司, 袴田, 健一, 三浦, 卓也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 31.03.2024
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ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.44.539

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Summary:症例は78歳の女性。直腸癌の精査中に酸化マグネシウム内服開始となるも,約1年間検査延期を繰り返した。手術の方針となり,腸閉塞所見を認めなかったため,術前に機械的腸管前処置(mechanical bowel preparation:以下,MBP)としてクエン酸マグネシウムとピコスルファートナトリウムを投与したところ,高マグネシウム(Mg)血症による意識障害,呼吸抑制ならびに徐脈が出現した。緊急手術による腫瘍切除と残便排出を行い,術後血液透析の実施で救命し得た。左側結腸癌術前のMBPは術中の視野確保や汚染軽減のために広く行われているが,閉塞所見がない症例でも腸管内圧の上昇により閉塞性腸炎をきたし,腸管内のMgが異常吸収されることで重症高Mg血症という重篤な転帰に至る可能性がある。MBP実施の有無については慎重に検討するべきであり,MBPを契機に発症した高Mg血症に対しては,迅速な残便排出と血液透析の実施を念頭に置くべきである。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.44.539