聴覚野活動による情動評価の検討

感情のメカニズムは複雑で明らかになっていない.このため,近年ではヒトの感情を定量化し,非侵襲計測法による感情の研究がなされている.情動は脳深部の辺縁系において起こると考えられており,この活動を直接的に計測することは困難である.このため本研究では,辺縁系と五感情報の集まる視床が大脳皮質を介して結合している神経生理学的関連性を利用し,脳磁図(MEG)を用いた聴覚野の聴性定常応答(ASSR)の計測から,情動と聴覚野の関連性を定量的に評価することを目的とする.実験では,20HzのASSRを誘発し,その間に国際情動刺激画像集(IAPS)による情動喚起を行う.IAPSには,2つの定量的指標,情動価,覚醒価...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual60; no. Abstract; p. 221_2
Main Authors 鈴木, 貴博, 塚原, 彰彦, 田中, 慶太
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2022
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual60.221_2

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Summary:感情のメカニズムは複雑で明らかになっていない.このため,近年ではヒトの感情を定量化し,非侵襲計測法による感情の研究がなされている.情動は脳深部の辺縁系において起こると考えられており,この活動を直接的に計測することは困難である.このため本研究では,辺縁系と五感情報の集まる視床が大脳皮質を介して結合している神経生理学的関連性を利用し,脳磁図(MEG)を用いた聴覚野の聴性定常応答(ASSR)の計測から,情動と聴覚野の関連性を定量的に評価することを目的とする.実験では,20HzのASSRを誘発し,その間に国際情動刺激画像集(IAPS)による情動喚起を行う.IAPSには,2つの定量的指標,情動価,覚醒価がある.これにより,IAPSを覚醒価,情動価がともに高いHAHV,覚醒価が高く情動価が低いHALV,覚醒価が低く情動価が中程度であるLANVに分け,情動を定量的に3つに分類した.これらを呈示時のASSRの平均振幅を比較することで,情動によるASSRの振幅変調を評価し,左聴覚野のHAHV,HALV呈示時のASSR平均振幅に有意な差がみられた<0.05).これは,日本人において情動が左半球優位であると考えられ,20Hzの帯域の脳波であるβ波が緊張やストレスと関わりがあり,情動価に影響したものとして推察される.以上より,聴覚野の活動から情動の情動価が定量的に評価できる可能性を示唆する.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual60.221_2