都市部高齢者における閉じこもり予備群の類型化 介護予防対策の具体化に向けて

目的 本研究は都市部高齢者における閉じこもり予備群の実態を明らかにするために,その出現状況を記述し,類型化によって既知の閉じこもり予測因子の保持状況を明らかにし,さらに類型化されたそれぞれの群の特徴について検討することを目的とした。 方法 東京都世田谷区の自宅で生活する65歳以上の全高齢者(149,991人)を対象に郵送調査を実施した。普段の外出頻度が週 2~3 回程度の者を「閉じこもり予備群」と定義した。既知の閉じこもり予測因子である,手段的日常生活動作能力(Instrumental Activities of Daily Living; IADL),抑うつ度,認知機能,交流状況を用いて非階...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 58; no. 11; pp. 935 - 947
Main Authors 村山, 洋史, 立花, 鈴子, 澁田, 景子, 福田, 吉治, 渋井, 優, 河島, 貴子, 可野, 倫子, 虎谷, 彰子, 村嶋, 幸代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2011
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.58.11_935

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Summary:目的 本研究は都市部高齢者における閉じこもり予備群の実態を明らかにするために,その出現状況を記述し,類型化によって既知の閉じこもり予測因子の保持状況を明らかにし,さらに類型化されたそれぞれの群の特徴について検討することを目的とした。 方法 東京都世田谷区の自宅で生活する65歳以上の全高齢者(149,991人)を対象に郵送調査を実施した。普段の外出頻度が週 2~3 回程度の者を「閉じこもり予備群」と定義した。既知の閉じこもり予測因子である,手段的日常生活動作能力(Instrumental Activities of Daily Living; IADL),抑うつ度,認知機能,交流状況を用いて非階層的クラスター分析により閉じこもり予備群を類型化し,得られた群の群間比較を行い,各群の特徴を記述した。 結果 自己回答した者のうち,「閉じこもり予備群」は11,282人(13.0%)であった。閉じこもり予備群について行ったクラスター分析の結果,全体良好群(46.4%),抑うつ傾向群(23.5%),認知機能低下•抑うつ傾向群(19.6%),IADL 低下群(6.5%),全体低下群(3.8%)の 5 群が得られた。群間の特徴比較から,「全体良好群」は身体•心理•社会的側面のいずれにおいても良好であること,「抑うつ傾向群」と「認知機能低下•抑うつ傾向群」は将来や転倒に対する不安感を有する者の割合が高く,昨年と比較して外出頻度が減少した者の割合が高いこと,「IADL 低下群」と「全体低下群」は平均年齢が高く要介護認定者の割合が高いこと,等が示された。 結論 得られた各群の特徴に基づき,一次予防介入方策を検討した。「全体良好群」:全体的に良好であるにもかかわらず外出頻度が週 2~3 回程度にとどまっている理由を同定し,生活実態に即して外出を促す。「抑うつ傾向群」:転倒不安の軽減を目的とした介入を行い,身体機能の低下を防ぐ。「認知機能低下•抑うつ傾向群」:認知機能低下を考慮したうえで,抑うつ傾向群同様,転倒不安の軽減を目的とした介入を行い,身体機能の低下を防ぐ。「IADL 低下群」:維持されている認知機能の低下を予防するために,認知症の発症を遅らせる生活スタイル等の情報提供を行う。「全体低下群」:現在導入されているサービスおよび支援が継続され,状態の変化に早期に対応できるように,地域の保健医療専門職および家族•近隣が目を配る。以上,本研究によって得られた結果は,閉じこもり一次予防対象者の状態像の把握の一助となり,その予防策の確立に寄与することが期待される。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.58.11_935