静脈サンプリングが偽陰性であり診断に苦慮したクッシング病の一例
症例は 37 歳女性.難治性高血圧症の原因精査で行った頭部 MRI にて下垂体腫瘍を疑われて当院へ紹介された.血中のホルモン基礎値は,adrenocorticotropic hormone (ACTH, 70.6 pg/ml) およびコルチゾール (26.5 μg/dl)が異常高値であり,中心性肥満を認めた.診断を確実なものとすべく静脈洞サンプリングを行ったところ,中枢と末梢における静脈血中の ACTH の値に差が見られず,クッシング病に矛盾する所見であった.しかし,その他の各種内分泌学的負荷試験の結果は全てクッシング病の診断基準を満たしており,全身他臓器の検索にて他の病変が指摘できなかった....
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Published in | 日大医学雑誌 Vol. 82; no. 4; pp. 237 - 241 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本大学医学会
01.08.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0029-0424 1884-0779 |
DOI | 10.4264/numa.82.4_237 |
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Summary: | 症例は 37 歳女性.難治性高血圧症の原因精査で行った頭部 MRI にて下垂体腫瘍を疑われて当院へ紹介された.血中のホルモン基礎値は,adrenocorticotropic hormone (ACTH, 70.6 pg/ml) およびコルチゾール (26.5 μg/dl)が異常高値であり,中心性肥満を認めた.診断を確実なものとすべく静脈洞サンプリングを行ったところ,中枢と末梢における静脈血中の ACTH の値に差が見られず,クッシング病に矛盾する所見であった.しかし,その他の各種内分泌学的負荷試験の結果は全てクッシング病の診断基準を満たしており,全身他臓器の検索にて他の病変が指摘できなかった.静脈サンプリングの結果が偽陰性であると判断し,クッシング病の術前診断のもと,内視鏡下経蝶形骨洞手術を行った.術中に腫瘍性病変を確認できたため摘出し,下垂体神経内分泌腫瘍すなわちクッシング病と診断した.術後 ACTH およびコルチゾールの値は正常化した.本症例は手術によりクッシング病の確定診断が得られ,静脈サンプリングの結果は偽陰性であったと判断された.静脈サンプリングは極めて稀に偽陰性になることがあり,注意が必要である.本稿においてその原因や対策について考察する. |
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ISSN: | 0029-0424 1884-0779 |
DOI: | 10.4264/numa.82.4_237 |