毛細血管構造を有する脂肪組織作製のための基礎研究
近年、皮膚移植や乳房再建などで脂肪組織の再生・再建が注目されている。現在、患者から脂肪組織を採取し、不要な細胞を除去して純化した状態で患部に再移植されている。その際、組織に血管が少なく血液が十分に流れないため、移植後の生着率が低いことが課題となっている。その解決策として脂肪組織由来間葉系幹細胞を加えた脂肪組織の移植も行われているが、依然として生着率は低いままである。そこで本研究では、移植後に血管新生を引き起こすことを期待するのではなく、あらかじめ毛細血管構造を有する脂肪組織をin vitroで作製することを目指した。 まず、紡糸用ノズルを用いて作製したアルギン酸ゲルモールドの中空部にコラーゲン...
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Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 258_2 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
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ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual62.258_2 |
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Summary: | 近年、皮膚移植や乳房再建などで脂肪組織の再生・再建が注目されている。現在、患者から脂肪組織を採取し、不要な細胞を除去して純化した状態で患部に再移植されている。その際、組織に血管が少なく血液が十分に流れないため、移植後の生着率が低いことが課題となっている。その解決策として脂肪組織由来間葉系幹細胞を加えた脂肪組織の移植も行われているが、依然として生着率は低いままである。そこで本研究では、移植後に血管新生を引き起こすことを期待するのではなく、あらかじめ毛細血管構造を有する脂肪組織をin vitroで作製することを目指した。 まず、紡糸用ノズルを用いて作製したアルギン酸ゲルモールドの中空部にコラーゲン溶液などに懸濁させたマウス脂肪前駆細胞(APC)とマウス血管内皮細胞(EC)を充填した。その後、脂肪細胞への分化誘導を行いながら2週間培養することで、ファイバー状の脂肪組織を作製した。また、APCとECを3 : 7, 5 : 5, 7 : 3の比率で混合して培養したところ、どの比率においても脂肪分化に成功した。次に、ファイバー状の脂肪組織に対し、オイルレッドO染色による脂肪の定量評価を行った。さらに、蛍光色素で前染色した血管内皮細胞を用いたファイバー状脂肪組織の凍結切片をVE-cadherinにて免疫染色を施し、共焦点顕微鏡で観察することで血管様構造の形成を確認した。これらより、毛細血管を有する脂肪組織ファイバーの作製が可能であると結論づけた。 |
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ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual62.258_2 |