ヒト親性の脳機能と機能不全への介入

養育行動は生命の存続において重要なプロセスであり,種を超えて幅広く観察される向社会行動の中で最も重要なものの一つである。本論文では,ヒトにおける親性に焦点を当て,これまでの養育行動に関連する脳イメージング研究によって明らかにされてきた知見を概説することでヒト親性の神経基盤について検討する。まず,養育機能が健常な場合の脳機能について検討するために,げっ歯類を対象とした研究における養育行動の神経・内分泌基盤に関する基本的知見に触れた後,ヒトにおいて特徴的である大脳皮質ネットワークの養育行動に対する関与について,脳イメージング研究によって明らかにされてきた知見に基づきながら検討する。次に,養育機能が...

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Published in発達心理学研究 Vol. 32; no. 4; pp. 210 - 218
Main Authors 島田, 浩二, 藤澤, 隆史, 友田, 明美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本発達心理学会 2021
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ISSN0915-9029
2187-9346
DOI10.11201/jjdp.32.210

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Summary:養育行動は生命の存続において重要なプロセスであり,種を超えて幅広く観察される向社会行動の中で最も重要なものの一つである。本論文では,ヒトにおける親性に焦点を当て,これまでの養育行動に関連する脳イメージング研究によって明らかにされてきた知見を概説することでヒト親性の神経基盤について検討する。まず,養育機能が健常な場合の脳機能について検討するために,げっ歯類を対象とした研究における養育行動の神経・内分泌基盤に関する基本的知見に触れた後,ヒトにおいて特徴的である大脳皮質ネットワークの養育行動に対する関与について,脳イメージング研究によって明らかにされてきた知見に基づきながら検討する。次に,養育機能が低下している際の脳機能について検討するために,養育ストレスが親性の脳機能に及ぼす影響について,筆者らが行った脳機能イメージング研究を交えて概説し,また養育失調に対する心理的介入が行動や脳機能の改善にもたらす効果について検討する。さらに養育準備期にある青年期の脳機能について検討するために,青年期における乳幼児との継続的接触経験が親性の脳機能に及ぼす影響に関する研究について概説する。最後に,近年の脳科学研究の進展に基づいた養育者支援の今後の展望について提案する。
ISSN:0915-9029
2187-9346
DOI:10.11201/jjdp.32.210