大腸癌腹膜播種に対する完全減量切除術後に体外循環用回路を使用し,術中腹腔内温熱療法を施行した一例
【諸言】本邦では、大腸癌取り扱い規約におけるP3の腹膜播種は化学療法が標準治療だが、新規抗癌剤を駆使してもその予後は不良である。近年先進諸国で一部の腹膜播種症例に対し、完全減量切除術(CRS; cytoreductive surgery)と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC; Hyperthermic intraperitoneal chemotherapy)の良好な治療成績が報告され、各国の診療指針に収載されている。一方、本邦で同様の治療を行うには、CRSの保険収載がなく、HIPECに使用する保険承認を受けた抗癌剤や、灌流液を腹腔内-回路間で循環させる薬事承認を受けた装置も存在しないことが障...
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Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 187_2 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
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ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual62.187_2 |
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Summary: | 【諸言】本邦では、大腸癌取り扱い規約におけるP3の腹膜播種は化学療法が標準治療だが、新規抗癌剤を駆使してもその予後は不良である。近年先進諸国で一部の腹膜播種症例に対し、完全減量切除術(CRS; cytoreductive surgery)と術中腹腔内温熱化学療法(HIPEC; Hyperthermic intraperitoneal chemotherapy)の良好な治療成績が報告され、各国の診療指針に収載されている。一方、本邦で同様の治療を行うには、CRSの保険収載がなく、HIPECに使用する保険承認を受けた抗癌剤や、灌流液を腹腔内-回路間で循環させる薬事承認を受けた装置も存在しないことが障壁となっている。【症例】60代女性。上行結腸癌(cT4aN1aH0P1M1c, cStageIVc)に対して根治目的に開腹し,原発巣周囲の播種巣切除を伴う右半結腸切除+D3郭清を施行。骨盤内の播種巣については非切除とした。術後、残存播種巣に対し化学療法を施行するも忍容性の問題から治療継続困難となった。院内倫理審査の承認を取得し、十分な情報提供のもと、大腸癌腹膜播種に対するCRSおよび化学療法を伴わない術中温熱療法を提案したところ、強い患者希望があり、上記治療を施行した。温熱療法は体外循環用回路・温水槽・熱交換器等を用い、腹腔内目標温度を41-43℃に設定し1時間施行した。【考察】近年,CRSに加えた化学療法を伴わない温熱療法についての有用性を報告する論文が存在する。【結語】薬剤や灌流用装置に制限のある本邦において、CRSに併施する化学療法を伴わない温熱療法はひとつの治療選択肢となりうる。 |
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ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual62.187_2 |