視床–大脳皮質経路による運動の制御:ニホンザルの眼球運動を指標とした研究
私たちは思いのままに運動をすることができる。これまで多くの動物実験や臨床研究から,基底核から視床を経て大脳皮質に到る経路が随意運動の発現に関与することが示唆されてきたが,具体的な神経メカニズムはわかっていない。ニホンザルはヒトと同様に大脳皮質が発達しており,複雑な行動課題も訓練できるため,高次脳機能を研究するのに適したモデルである。特に,測定が容易な眼球運動を行動指標とすることにより,行動と神経活動の関係を詳細に検討することができる。近年,我々は眼球運動を指標として自発運動のタイミングの調節や,反射的な行動の抑制を伴った運動を制御する神経機構について研究を行った。これらの行動を行っているときの...
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Published in | 比較生理生化学 Vol. 29; no. 4; pp. 235 - 241 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本比較生理生化学会
2012
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ISSN | 0916-3786 1881-9346 |
DOI | 10.3330/hikakuseiriseika.29.235 |
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Summary: | 私たちは思いのままに運動をすることができる。これまで多くの動物実験や臨床研究から,基底核から視床を経て大脳皮質に到る経路が随意運動の発現に関与することが示唆されてきたが,具体的な神経メカニズムはわかっていない。ニホンザルはヒトと同様に大脳皮質が発達しており,複雑な行動課題も訓練できるため,高次脳機能を研究するのに適したモデルである。特に,測定が容易な眼球運動を行動指標とすることにより,行動と神経活動の関係を詳細に検討することができる。近年,我々は眼球運動を指標として自発運動のタイミングの調節や,反射的な行動の抑制を伴った運動を制御する神経機構について研究を行った。これらの行動を行っているときの視床や基底核,前頭葉の神経活動を調べたところ,運動に先立った活動が記録された。また,前頭葉の一部を電気刺激することによって自発的な運動のタイミングを操作することができ,薬理学的に視床を不活化すると運動のタイミングや随意的な運動のパラメーターに変化が生じた。これらの結果から,基底核–視床–大脳皮質経路でみられる運動準備期間中の神経活動が随意運動の制御に重要であることが明らかとなった。この成果は,不随意運動や無動といった運動の異常とともに,感情的な衝動性といった発達障害や精神神経疾患でみられる様々な症状の病態解明につながる可能性がある。 |
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ISSN: | 0916-3786 1881-9346 |
DOI: | 10.3330/hikakuseiriseika.29.235 |