鼓室形成術のコツ 司会のことば
鼓室形成術は, 耳鼻咽喉科領域を代表する手術術式であり, 手術の熟達を目指す若手の耳鼻咽喉科医にとっては是非習得したい技術である. そのためには, 鼓室形成術の適応を確実に診断できること, 適正な術式を選択すること, 手術症例を含めた詳細な局所解剖を把握できること, 安全で確実な手術手技を習得すること, 再発防止や聴力改善の工夫ができること, 等々のさまざまな知識や技能を習得しなくてはならない. この度の第31回日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会の領域講習10では, 近畿大学の土井勝美教授, 東京慈恵会医科大学の小島博己教授により「鼓室形成術のコツ」が講演される. いずれも耳科手術を中心に活発な臨...
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| Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 12; p. 1530 |
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| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.12.2018
日本耳鼻咽喉科学会 |
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| ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
| DOI | 10.3950/jibiinkoka.121.1530 |
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| Summary: | 鼓室形成術は, 耳鼻咽喉科領域を代表する手術術式であり, 手術の熟達を目指す若手の耳鼻咽喉科医にとっては是非習得したい技術である. そのためには, 鼓室形成術の適応を確実に診断できること, 適正な術式を選択すること, 手術症例を含めた詳細な局所解剖を把握できること, 安全で確実な手術手技を習得すること, 再発防止や聴力改善の工夫ができること, 等々のさまざまな知識や技能を習得しなくてはならない. この度の第31回日本耳鼻咽喉科学会専門医講習会の領域講習10では, 近畿大学の土井勝美教授, 東京慈恵会医科大学の小島博己教授により「鼓室形成術のコツ」が講演される. いずれも耳科手術を中心に活発な臨床活動を実践しているエキスパートの耳鼻咽喉科医である. 対象疾患は, 進行した真珠腫性中耳炎であり, 鼓室形成術の中でも比較的高度な技術を要する疾患である. 土井勝美先生の基本術式は段階的鼓室形成術である. したがって, 1次手術では可及的良好な視野確保のため後壁は削除され, 術後の換気ルート確保のための操作が述べられる. さらに, シリコン膜を工夫して, 術後の癒着防止と含気化の促進を促している. 約1年後の2次手術においては, 再発の有無と含気化の確認を行った後, 耳小骨形成術と外耳道形成を行う. 最後に, 中耳含気化の程度をCTにより5段階のスコア化して, 段階手術が術後の含気化に優れること, さらに術後聴力成績や真珠腫再形成にも良い影響があると述べている. 小島博己先生は外耳道後壁保存型鼓室形成術を選択している. はじめに, 解剖の把握, 視野の確保, 確実な止血の重要性を強調している. 皮膚切開, 後壁皮膚から鼓膜の剥離, 鼓索神経への配慮, 耳小骨と顔面神経の確認, 乳突削開と真珠腫摘出, 鼓膜形成, 耳小骨形成, 外耳道パッキングと手術の手順に従い解説し, それぞれのステージ毎でコツを披露してくれる. 最後に, 良好な視野確保のためには, 顕微鏡の方向や患者の体位の工夫が重要性であると再度強調している. 本領域講習10は, これから本格的に鼓室形成術を習得しようとする若手の耳鼻咽喉科医を対象に, たとえ術式の違いがあっても, 基本となる手技に対する考え方は同一であり, 安全で確実かつ良好な手術成績を得られるコツを教示してくれる講習となる. |
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| ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
| DOI: | 10.3950/jibiinkoka.121.1530 |