体験活動を通じた大学生の社会情緒的発達:感情制御に着目して
本研究の目的は,東京大学で行われている「体験活動」と呼ばれる課外活動を通じて,大学生の社会情緒的側面がいかに発達するのかを検討することであった。分析対象者は276名(男性:164名,女性:106名,性別無回答6名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は20.46歳(SDage=1.43,Medianage=20,レンジ:18–27歳)であった。分析の対象とされた変数は,パーソナリティ特性,首尾一貫感覚,感情制御方略であった。各パーソナリティ特性と首尾一貫感覚の相対的な安定性,平均値の変化,および変化の個人差についてそれぞれ検討を行った。その結果,パーソナリティ特性と首尾一貫感覚は活動前後で高...
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Published in | 発達心理学研究 Vol. 27; no. 1; pp. 32 - 46 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本発達心理学会
2016
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0915-9029 2187-9346 |
DOI | 10.11201/jjdp.27.32 |
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Summary: | 本研究の目的は,東京大学で行われている「体験活動」と呼ばれる課外活動を通じて,大学生の社会情緒的側面がいかに発達するのかを検討することであった。分析対象者は276名(男性:164名,女性:106名,性別無回答6名)であり,一時点目の調査時点での平均年齢は20.46歳(SDage=1.43,Medianage=20,レンジ:18–27歳)であった。分析の対象とされた変数は,パーソナリティ特性,首尾一貫感覚,感情制御方略であった。各パーソナリティ特性と首尾一貫感覚の相対的な安定性,平均値の変化,および変化の個人差についてそれぞれ検討を行った。その結果,パーソナリティ特性と首尾一貫感覚は活動前後で高い程度で相対的に安定していることが示された。また平均値の変化については,外向性と首尾一貫感覚において統計的に有意な得点の上昇がみられた。さらに,その変化の個人差は,個人の感情制御方略の傾向によって一部説明されることも明らかとなった。分析結果より,肯定的再評価をよく用いるものほど外向性のレベルがより高くなる方向へ変化し,受容をよく用いるものほど外向性のレベルがより下がることが示された。本研究の結果は,大学生においても体験活動のような課外活動への参加が社会情緒的発達に対して効果的である可能性を示唆している。 |
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ISSN: | 0915-9029 2187-9346 |
DOI: | 10.11201/jjdp.27.32 |