臓器チップ上のメカノシグナリングを介した心臓の組織構築と機能の再現

マイクロ流体チップ上で数種類の細胞を共培養することにより、心臓、肺、肝臓などの組織構造を構築し、臓器機能を再現する臓器チップ技術が着実に進歩している。ヒト幹細胞を用いて臓器の構造を構築し、臓器の機能を再現する過程において、メカノシグナリングは本質的な役割を果たす。著者らが開発した心臓チップは、血管内皮細胞、線維芽細胞、およびヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞から成る。マイクロ流体チップ上で培養した血管内皮細胞は、圧力刺激および伸展刺激に応じて一酸化窒素を放出する。このことは、生体内で血圧が上昇したときに血管平滑筋を弛緩させる一酸化窒素が放出される事象を再現している。またマイクロ流体チップ上...

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 96_2
Main Authors 王, 夢雪, 劉, 雲, 成瀬, 恵治, 高橋, 賢
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual62.96_2

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Summary:マイクロ流体チップ上で数種類の細胞を共培養することにより、心臓、肺、肝臓などの組織構造を構築し、臓器機能を再現する臓器チップ技術が着実に進歩している。ヒト幹細胞を用いて臓器の構造を構築し、臓器の機能を再現する過程において、メカノシグナリングは本質的な役割を果たす。著者らが開発した心臓チップは、血管内皮細胞、線維芽細胞、およびヒトiPS細胞から分化誘導した心筋細胞から成る。マイクロ流体チップ上で培養した血管内皮細胞は、圧力刺激および伸展刺激に応じて一酸化窒素を放出する。このことは、生体内で血圧が上昇したときに血管平滑筋を弛緩させる一酸化窒素が放出される事象を再現している。またマイクロ流体チップ上で培養した血管内皮細胞は、培養液の流れを検知して流れの方向に配向するとともに、細胞間結合タンパクの一種であるCD31の発現量を増加させ、血管透過性を低下させる。一方、iPS心筋もマイクロ流体チップ上で流路に並行な方向に配向を示すものの、この現象は培養液の流れの検知とは別の機序によって起こると考えられる。線維芽細胞を構成成分として含むこの心臓チップは、ヒト心臓の生理的機能の再現にとどまらず、心臓の過伸展による線維化の病態の再現など、有用な病態モデルの開発にも貢献することが期待される。
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.96_2