鶏卵アレルギーの小児における腸内細菌叢の乱れ

腸内細菌叢はヒトの腸管内で一定のバランスを保ちながら共生する細菌集団であり,その代謝産物はヒトの健康に影響を与える.腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)は生涯においてさまざまな疾患の発症に関与している.アレルギー疾患患者の腸内細菌叢についてもdysbiosisを呈しているとする報告は多数あるが,その特徴やアレルギー疾患の発症機序に関してコンセンサスはない.今回,筆者らは鶏卵アレルギーの患児において,腸内細菌叢に占める酪酸産生菌が有意に少ないこと,および末梢血の制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)が少ないことを報告した.酪酸は短鎖脂肪酸の一つであり,主に大腸上皮細胞の...

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Published in関西医科大学雑誌 Vol. 74; pp. 13 - 18
Main Authors 赤川, 翔平, 辻, 章志, 金子, 一成, 山岸, 満
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 関西医科大学医学会 2023
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ISSN0022-8400
2185-3851
DOI10.5361/jkmu.74.13

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Summary:腸内細菌叢はヒトの腸管内で一定のバランスを保ちながら共生する細菌集団であり,その代謝産物はヒトの健康に影響を与える.腸内細菌叢の乱れ(dysbiosis)は生涯においてさまざまな疾患の発症に関与している.アレルギー疾患患者の腸内細菌叢についてもdysbiosisを呈しているとする報告は多数あるが,その特徴やアレルギー疾患の発症機序に関してコンセンサスはない.今回,筆者らは鶏卵アレルギーの患児において,腸内細菌叢に占める酪酸産生菌が有意に少ないこと,および末梢血の制御性T細胞(regulatory T cell: Treg)が少ないことを報告した.酪酸は短鎖脂肪酸の一つであり,主に大腸上皮細胞のエネルギー源として利用されるが,腸管免疫系においてTregを分化誘導することも知られている.したがって,酪酸産生菌の減少に特徴づけられるdysbiosisが,腸管免疫系でのTregの減少を招き,アレルギー疾患発症に関与している可能性がある.本研究成果は今後腸内細菌叢を標的としたアレルギー疾患の新たな予防や治療介入につながる可能性があると考えられる.
ISSN:0022-8400
2185-3851
DOI:10.5361/jkmu.74.13