わが国において,湿度は気温—死亡の関係に影響を与えない
気温と死亡率との関連がV字型である—気温が非常に高くても低くても死亡率が高くなる—ことが数編報告されている.このV字型に,交絡因子として湿度が及ぼす影響を量的に把握するため,1972年-1990年の日本の都道府県別データを解析した.まず,19年間の平均気温から都道府県を5地域に分類し,それぞれの地域について性·年次·日最高気温区分·日平均相対湿度区分別に65歳以上総死亡率を計算した.それをもとに2種類のMantel-Haenszel死亡率比,すなわち年次のみを制御したものと年次と相対湿度を制御したものを計算した.前者を後者で除した比は,湿度が交絡因子でなければ1となる.この比を日最高気温·地域...
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Published in | 日本生気象学会雑誌 Vol. 37; no. 4; pp. 117 - 122 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本生気象学会
2000
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0389-1313 1347-7617 |
DOI | 10.11227/seikisho.37.117 |
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Summary: | 気温と死亡率との関連がV字型である—気温が非常に高くても低くても死亡率が高くなる—ことが数編報告されている.このV字型に,交絡因子として湿度が及ぼす影響を量的に把握するため,1972年-1990年の日本の都道府県別データを解析した.まず,19年間の平均気温から都道府県を5地域に分類し,それぞれの地域について性·年次·日最高気温区分·日平均相対湿度区分別に65歳以上総死亡率を計算した.それをもとに2種類のMantel-Haenszel死亡率比,すなわち年次のみを制御したものと年次と相対湿度を制御したものを計算した.前者を後者で除した比は,湿度が交絡因子でなければ1となる.この比を日最高気温·地域·性別にみると,0.989から1.037の範囲にあり,比の89%は相違が1%未満であった.このことは,気温と死亡率との関連を評価する際に,少なくとも日本における65歳以上の総死亡率においては湿度を制御する必要がないことを示唆する. |
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ISSN: | 0389-1313 1347-7617 |
DOI: | 10.11227/seikisho.37.117 |