手持ち振動工具取扱い者の末梢循環障害評価における手背部熱画像の定量的分析

手持ち振動工具の取扱い者を対象にサーモグラフィを施行し、手背面サーモグラムの温度分布を指標として、振動曝露者におけるサーモグラムの類型化を行うとともに、職業性レイノー現象 (VWF) におけるサーモグラムの特徴を代表する定量的な評価指標の構築を試みた。 サーモグラフィは、林業労働者 (振動曝露者) 38名と道路保全作業や造林など従事する現業作業員42名に実施し、解析は、各症例について左手と右手を独立して行い、各々75手 (手指欠損の1手を除く)、84手(「対照群」)となり、さらに、75手についてはVWFの症状を認める18手を「VWF群」、認めない57手を「非VWF群」に分類した。 手背から手指...

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Published in日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 71; no. 2; pp. 111 - 123
Main Authors 宮下, 和久, 坂口, 俊二, 吉益, 光一, 宮井, 信行, 森岡, 郁晴
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本温泉気候物理医学会 2008
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ISSN0029-0343
1884-3697
DOI10.11390/onki1962.71.111

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Summary:手持ち振動工具の取扱い者を対象にサーモグラフィを施行し、手背面サーモグラムの温度分布を指標として、振動曝露者におけるサーモグラムの類型化を行うとともに、職業性レイノー現象 (VWF) におけるサーモグラムの特徴を代表する定量的な評価指標の構築を試みた。 サーモグラフィは、林業労働者 (振動曝露者) 38名と道路保全作業や造林など従事する現業作業員42名に実施し、解析は、各症例について左手と右手を独立して行い、各々75手 (手指欠損の1手を除く)、84手(「対照群」)となり、さらに、75手についてはVWFの症状を認める18手を「VWF群」、認めない57手を「非VWF群」に分類した。 手背から手指全体の局所加温5分後の手背面サーモグラムパターンから、振動曝露者のサーモグラムを3パターンに類型化した。続いて、振動曝露者におけるI~III型のサーモグラムを代表するパラメータを設定し、その上で、VWFの有無を従属変数に、各パラメータを独立変数とした判別分析を行い、線形判別関数モデル式を得た。モデル式から得られた各群の判別得点を評価指標とし、そのVWFの有無に対する識別能力を受信者動作特性 (ROC) 曲線により検討した結果、ROC曲線下面積は0.942 (p<0.001) となった。さらに、ROC曲線において Youden 指数が最大になる値をカットオフ値としたときの各群での検査陽性数をみると、VWF群: 17手、非VWF群: 9手、対照群: 9手となり、VWF群での感度は94.4%、非VWF群と対照群での特異度は各々84.2%、89.3%となった。 以上のことから、今回新たに考案した手背面サーモグラムの温度分布を指標とする定量的分析法は、振動障害におけるレイノー現象の評価法として有用であることが示唆された。
ISSN:0029-0343
1884-3697
DOI:10.11390/onki1962.71.111