災害医療における鉄道搬送のニーズ
日本の災害医療は阪神淡路大震災の教訓から、災害に強い災害拠点病院の認定、被災状況の共有目的での広域災害救急医療情報システムの整備、被災地内で医療支援活動を行う災害支援チームの養成、被災地内の医療負荷軽減を目的として被災地外へ傷病者を搬送する広域医療搬送を4本柱としてきた。 しかし、令和6年能登半島地震では長期に及ぶ停電、断水下では地域医療は維持できず、被災地の病院や福祉施設から多数の傷病者や入居者の長距離搬送を余儀なくされた。石川1県でさえ従来の航空機や緊急車両による搬送力では搬送ニーズを満たすことは困難であったが、多数の地域が被災する南海トラフ大地震を考えれば、より大量搬送に適した手段がなけ...
Saved in:
Published in | Transactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 90_1 |
---|---|
Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本生体医工学会
2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1347-443X 1881-4379 |
DOI | 10.11239/jsmbe.Annual62.90_1 |
Cover
Summary: | 日本の災害医療は阪神淡路大震災の教訓から、災害に強い災害拠点病院の認定、被災状況の共有目的での広域災害救急医療情報システムの整備、被災地内で医療支援活動を行う災害支援チームの養成、被災地内の医療負荷軽減を目的として被災地外へ傷病者を搬送する広域医療搬送を4本柱としてきた。 しかし、令和6年能登半島地震では長期に及ぶ停電、断水下では地域医療は維持できず、被災地の病院や福祉施設から多数の傷病者や入居者の長距離搬送を余儀なくされた。石川1県でさえ従来の航空機や緊急車両による搬送力では搬送ニーズを満たすことは困難であったが、多数の地域が被災する南海トラフ大地震を考えれば、より大量搬送に適した手段がなければ被災地内での避け得た災害死が多数発生すると予想される。この点において鉄道輸送は大量搬送ニーズに大変良く合致したものと考えられるが、航空機に比し鈍足、かつ阪神淡路大震災等での鉄路被害のイメージが先行し鉄道搬送に関する研究は殆ど行われて来なかったのは誠に残念なことである。貴重な航空機を遠距離へ長時間使用せず被災地内でのピストン搬送のみに使用し、被災地近傍からの大量搬送は鉄路搬送を組み合わせることにより輸送力を格段に向上させることが可能である。さらには傷病者搬送のみならず、被災地への人的、物的資源の大量投入にも適しているため鉄道の災害医療への活用には大きな可能性を秘めていると考えられる。 |
---|---|
ISSN: | 1347-443X 1881-4379 |
DOI: | 10.11239/jsmbe.Annual62.90_1 |