垂直レーダーで観測した降水雲中の融解層付近の微物理過程

垂直レーダーを使って,1975年6月28日に名古屋で行なった,梅雨前線の北側に位置する降水雲の定量的観測を基に,融解層付近の微物理過程を調べた。その結果,移動するレーダーエコーシステムに於て,エコーの微細構造及び微物理過程が異なる以下の3つの時間帯が見出された。 前線上の低気圧が名古屋の西南西約1000kmの位置にあった時間帯Aでは,融解層中で雪片の分裂が生じ,ていたか否かは明らかでは無い。融解層より上空の領域では,氷の粒子が場所によっては蒸発しつつ落下していたと思われる。融解層より下では雨滴は蒸発を主に受けていた。低気圧が名古屋の南西約700kmの位置にあった時間帯Bでは,0°C高度以上にあ...

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Published in気象集誌. 第2輯 Vol. 56; no. 4; pp. 293 - 303
Main Authors 藤吉, 康志, 武田, 喬男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本気象学会 1978
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ISSN0026-1165
2186-9057
DOI10.2151/jmsj1965.56.4_293

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Summary:垂直レーダーを使って,1975年6月28日に名古屋で行なった,梅雨前線の北側に位置する降水雲の定量的観測を基に,融解層付近の微物理過程を調べた。その結果,移動するレーダーエコーシステムに於て,エコーの微細構造及び微物理過程が異なる以下の3つの時間帯が見出された。 前線上の低気圧が名古屋の西南西約1000kmの位置にあった時間帯Aでは,融解層中で雪片の分裂が生じ,ていたか否かは明らかでは無い。融解層より上空の領域では,氷の粒子が場所によっては蒸発しつつ落下していたと思われる。融解層より下では雨滴は蒸発を主に受けていた。低気圧が名古屋の南西約700kmの位置にあった時間帯Bでは,0°C高度以上にある氷の粒子が,同じような粒径分布を持っているのにも拘らず,粒子のタイプが異なる為に融解層中での併合の激しさ(雪片の形成)に差が生じたものと考えられる。融解層より上では,過冷却水滴の付着及び(又は)氷の粒子同士の併合が生じていたと思われる。融解層より下の領域では,雨滴は,目立った成長も蒸発もせずに落下していた。低気圧が名古屋の南南西約500kmにあった時間帯Cでは,融解層中で雪片の分裂が生じていたと思われる。この時間帯では,時間帯Bとは逆に,O°C高度以上での粒子の粒径分布の差が併合の激しさに影響を与えていると思われる。融解層より上では,過冷却水滴の付着及び(又は)氷の粒子同士の併合が生じていたと考えられる。融解層より下では,雨滴は互いに併合を行なうか,又は雲粒を捕捉していたと思われる。
ISSN:0026-1165
2186-9057
DOI:10.2151/jmsj1965.56.4_293