網羅的免疫シークエンス法の進歩と臨床医学への応用

獲得免疫系の主役をなす細胞群であるT細胞とB細胞は,抗原特異的な受容体として,それぞれT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)とB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)を発現している.TCRとBCRの抗原結合部位は,遺伝子再構成により決定され,ヒトの体内では1010オーダーの多様性を獲得している.従来,これらの膨大な数に及ぶ抗原受容体のレパートリー(レパトア)の全容を知ることは困難であったが,核酸シークエンス技術の飛躍的発展により,所望の細胞集団に発現されているTCR・BCRの遺伝子配列を個々のクローンのレベルで同定することが可能となった.現在,このような網羅的免疫...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本内科学会雑誌 Vol. 108; no. 11; pp. 2347 - 2355
Main Author 一戸, 辰夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.11.2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.108.2347

Cover

More Information
Summary:獲得免疫系の主役をなす細胞群であるT細胞とB細胞は,抗原特異的な受容体として,それぞれT細胞受容体(T-cell receptor:TCR)とB細胞受容体(B-cell receptor:BCR)を発現している.TCRとBCRの抗原結合部位は,遺伝子再構成により決定され,ヒトの体内では1010オーダーの多様性を獲得している.従来,これらの膨大な数に及ぶ抗原受容体のレパートリー(レパトア)の全容を知ることは困難であったが,核酸シークエンス技術の飛躍的発展により,所望の細胞集団に発現されているTCR・BCRの遺伝子配列を個々のクローンのレベルで同定することが可能となった.現在,このような網羅的免疫シークエンス技術が,免疫応答のin vivoモニタリングや抗体医薬品・ワクチン・細胞医薬品等の創薬に応用されつつあり,今後もさまざまな医療の領域に大きな革新をもたらすことが期待されている.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.108.2347