毛髪の化学分析による地域環境中の微量元素モニタリングの一方法

地域住民の環境中ヒ素, マンガン, 水銀, セレン, カドミウム, 鉛, クロム等環境汚染物質へのばくろ状況をモニターする目的で, 中性子放射化分析と原子吸光分析とを併用して毛髪中の元素濃度分析を行った。毛髪試料は, これまで人為的環境汚染が問題となったことのない国内6地域に住む男女高校生から採取した。 分析に要する時間と労力を節約するため, 試料を個人別に分析することを避け, 細切した10人分ずつの毛髪を等量にプールし, 洗浄過程で十分に混和した混合試料について分析を行った。 得られた地域別, 男女別の分析値に Kruskal-Wallis 検定を適用して地域間の毛髪中元素濃度レベルの差を検...

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Published in日本衛生学雑誌 Vol. 37; no. 5; pp. 768 - 778
Main Authors 福島, 一郎, 塩原, 正, 江波戸, 擧秀, 今堀, 彰, 兵井, 伸行
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人日本衛生学会 1982
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ISSN0021-5082
1882-6482
DOI10.1265/jjh.37.768

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Summary:地域住民の環境中ヒ素, マンガン, 水銀, セレン, カドミウム, 鉛, クロム等環境汚染物質へのばくろ状況をモニターする目的で, 中性子放射化分析と原子吸光分析とを併用して毛髪中の元素濃度分析を行った。毛髪試料は, これまで人為的環境汚染が問題となったことのない国内6地域に住む男女高校生から採取した。 分析に要する時間と労力を節約するため, 試料を個人別に分析することを避け, 細切した10人分ずつの毛髪を等量にプールし, 洗浄過程で十分に混和した混合試料について分析を行った。 得られた地域別, 男女別の分析値に Kruskal-Wallis 検定を適用して地域間の毛髪中元素濃度レベルの差を検討した。ヒ素, 水銀, セレン, カドミウム, 鉛, クロムの濃度においては, 6地域がいずれも非汚染地域であるにもかかわらず, 男女ともかなりの地域差が存在することが判った。マンガン濃度は, 女子において若干の地域差が認められたが, 男子については証明できなかった。 今回著者らが試みた混合試料について測定する方法は, 試料を個人別に測定する従来の方法に比べて, 測定に要する時間と労力を軽減することができ, 地域住民の環境汚染物質へのばくろ状況を経常的にモニターするための技法として適切なものであると考えられた。
ISSN:0021-5082
1882-6482
DOI:10.1265/jjh.37.768