一般住民におけるマンモグラフィ検診への選好に関する研究 選択型実験を用いて

目的 日本では乳がんマンモグラフィ検診の受診率が低い水準で推移している。人々のマンモグラフィ検診への需要からこの問題を検討するため,表明選好法の 1 つである選択型実験を用いて以下の 3 点を本研究の目的とした。1)マンモグラフィ検診対象年齢の一般住民が検診のどのような属性を潜在的に評価しているか傾向を探ること,2)サンプルをマンモグラフィ検診経験者•非経験者に分け,サブサンプル間で属性の評価傾向の違いを検討することにより表明選好法の妥当性を検証すること,3)今後需要があると考えられる検診オプションを想定し,シナリオを設定して選択行動を予測すること。 方法 都内在住の一般住民のうち,40~59...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 57; no. 2; pp. 83 - 94
Main Authors 田口, 良子, 中山, 和弘, 山崎, 喜比古
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2010
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.57.2_83

Cover

More Information
Summary:目的 日本では乳がんマンモグラフィ検診の受診率が低い水準で推移している。人々のマンモグラフィ検診への需要からこの問題を検討するため,表明選好法の 1 つである選択型実験を用いて以下の 3 点を本研究の目的とした。1)マンモグラフィ検診対象年齢の一般住民が検診のどのような属性を潜在的に評価しているか傾向を探ること,2)サンプルをマンモグラフィ検診経験者•非経験者に分け,サブサンプル間で属性の評価傾向の違いを検討することにより表明選好法の妥当性を検証すること,3)今後需要があると考えられる検診オプションを想定し,シナリオを設定して選択行動を予測すること。 方法 都内在住の一般住民のうち,40~59歳の乳がん非経験者800人を対象に郵送自記式質問紙調査による選択型実験を実施し301人より回答を得た。マンモグラフィ検診に関する 5 属性からなる仮想的な検診を 2 つ 1 組として提示し,どちらの検診であれば受けようと思うかを尋ねた。全サンプルとサブサンプルについて検診属性を独立変数,いずれかの検診を受ける•受けないの選択を従属変数として条件付きロジットモデルによりパラメータを推定した。この結果を基に,検診の所要時間と費用に関して,短時間•高費用と長時間•低費用の 2 種類の検診オプションを設定して選択行動を予測した。 結果 全サンプルではマンモグラフィ検診に関する 5 つの属性:検診を受けるためにかかる合計時間,乳房の痛みの程度,検診で乳がんが見逃される可能性,乳がんによる死亡を減少させる効果,検診を受けるためにかかる合計費用,のいずれも 5%水準で有意で符号の向きが予想と一致する係数が推定された。サブサンプルの推定結果の比較から行動と選好のプラスの相関が確認された。選択行動の予測では,短時間の検診の費用が約7,500円までの場合には,その選択割合は長時間•低費用の検診より高いかほぼ同じであった。 結論 対象者は健康アウトカム以外に検診プロセスに関する属性をも無視できない評価をしていることが明らかとなった。検診への選好を調べる手段として表明選好法の妥当性が示唆された。短時間•高費用の検診は長時間•低費用の検診に対し約7,500円までの価格であれば競争力を持つことが示唆された。  以上より,受診対象者の需要を高める検診環境を整備することによって,マンモグラフィ検診受診率が向上する可能性が示唆された。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.57.2_83