通信制禁煙プログラム「禁煙コンテスト」の評価

目的 通信制禁煙プログラム「禁煙コンテスト」は,禁煙キャンペーンとして実施され,決められた期間の禁煙に成功すると抽選で賞品が贈呈されるという Quit & Win 方略に基づいて開発されている。この方略は1980年代前半に米国で開発され,現在は世界的に活用されている。プログラムの概要は,数種類の教材を用い,最初の 2 週間はたばこを吸わない生活習慣を徐々に身につけ 4 週間の完全禁煙に挑戦するものであった。本研究では,成績の評価,禁煙に関連する個人特性の分析を通して,Quit & Win 方略のわが国への適用可能性を検討することを目的とした。 方法 1998年から2000年に(...

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Published in日本公衆衛生雑誌 Vol. 51; no. 5; pp. 357 - 370
Main Authors 木下, 朋子, 大島, 明, 水田, 一郎, 中村, 正和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本公衆衛生学会 2004
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ISSN0546-1766
2187-8986
DOI10.11236/jph.51.5_357

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Summary:目的 通信制禁煙プログラム「禁煙コンテスト」は,禁煙キャンペーンとして実施され,決められた期間の禁煙に成功すると抽選で賞品が贈呈されるという Quit & Win 方略に基づいて開発されている。この方略は1980年代前半に米国で開発され,現在は世界的に活用されている。プログラムの概要は,数種類の教材を用い,最初の 2 週間はたばこを吸わない生活習慣を徐々に身につけ 4 週間の完全禁煙に挑戦するものであった。本研究では,成績の評価,禁煙に関連する個人特性の分析を通して,Quit & Win 方略のわが国への適用可能性を検討することを目的とした。 方法 1998年から2000年に(財)大阪がん予防検診センターが開催した 3 回のコンテストの申込者4,221人を対象とした。申込者のうちプログラムへの参加意志を表した者を参加者と定義し,成績評価の母数として用いた。成績は 4 週間,6 か月間,1 年間の禁煙率で評価した。禁煙状況は参加者から提出されるレポート(本人と 2 人の証人の申告)で,個人特性はアンケート調査で把握した。個人特性の分析には多重ロジスティック回帰分析を用いた。 結果 成績は 4 週間が46%,その後 6 か月間,1 年間がそれぞれ20%, 15%であった。なお,申込者のうち60%がプログラムに参加していた。個人特性の分析の結果,4 週間では,男性,年齢が高い,配偶者がいる,ニコチン依存度が低い,禁煙への準備性が高い,禁煙に成功する自信をもっている,健康への不安を感じていないという特性が,禁煙成功と有意な関連を示した。これらの特性のうち,性別と禁煙に対する心理的側面の評価,すなわち準備性と自信は 6 か月間,1 年間の両期間の禁煙継続とも有意な関連を示した。4 週間の禁煙とは有意な関連を示さなかった 1 か月以上の禁煙経験がある,慢性疾患があるという特性は,その後の禁煙継続とのみ有意な関連を示した。 結論 通信制禁煙プログラム「禁煙コンテスト」は,諸外国で実施された Quit & Win 方略を用いたプログラムとほぼ同等の成績を示した。また本プログラムはセルフヘルプ法であったにも関わらず,わが国の禁煙プログラムとしても比較的よい成績を示した。したがって Quit & Win 方略は文化や社会的背景が欧米とは異なるわが国においても有効な禁煙サポート方略であると考えられた。
ISSN:0546-1766
2187-8986
DOI:10.11236/jph.51.5_357