腎障害におけるポドサイトの役割

臨床の現場では,原因疾患を問わず腎障害の重要なマーカーとして蛋白尿が使用されている.正常人では高度な蛋白尿は認められないが,何らかの原因により血液の濾過装置である糸球体が障害を受けると,糸球体構成細胞の一つである糸球体足細胞(ポドサイト)が障害を受け,著明な蛋白尿が生じる.ポドサイトは高度に分化した細胞であり,糸球体内皮細胞と糸球体基底膜を外側から覆い,血中蛋白質の最終的な濾過障壁としての機能を果たしている.ポドサイト障害の早期には,まずスリット膜の分子構造の変化と足突起の細胞骨格であるアクチン骨格の分布が変化し,足突起は消失してその噛み合わせを失う.ポドサイト障害が長く持続すると糸球体基底膜...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 101; no. 4; pp. 1092 - 1101
Main Authors 淺沼, 克彦, 日高, 輝夫, 富野, 康日己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 2012
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.101.1092

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Summary:臨床の現場では,原因疾患を問わず腎障害の重要なマーカーとして蛋白尿が使用されている.正常人では高度な蛋白尿は認められないが,何らかの原因により血液の濾過装置である糸球体が障害を受けると,糸球体構成細胞の一つである糸球体足細胞(ポドサイト)が障害を受け,著明な蛋白尿が生じる.ポドサイトは高度に分化した細胞であり,糸球体内皮細胞と糸球体基底膜を外側から覆い,血中蛋白質の最終的な濾過障壁としての機能を果たしている.ポドサイト障害の早期には,まずスリット膜の分子構造の変化と足突起の細胞骨格であるアクチン骨格の分布が変化し,足突起は消失してその噛み合わせを失う.ポドサイト障害が長く持続すると糸球体基底膜上からポドサイトは脱落し,糸球体硬化・慢性腎不全へと進行して行く.最近,ポドサイト障害から糸球体硬化にいたるメカニズムが,分子生物学的手法を用い急速に解明されつつあり,ポドサイトのアクチン骨格再構成・細胞死・オートファジーなどが関係することがわかってきた.ポドサイトにおけるこれらの機序の解明とともに,ポドサイトにターゲットを絞った新規治療薬が検索されつつある.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.101.1092