アルコールベース速乾性擦り込み式手指消毒剤の使用による菌交代についての検討

近年、点滴操作によるBacillus cereus血流感染が院内感染予防上の重要課題となっている。本研究では、病院業務を行う過程において、アルコールベース速乾性擦り込み式手指消毒剤を大量に使用することで、アルコールに感受性がない桿菌であるB. cereusの手掌における菌交代が起こるかを検証した。手指消毒剤の使用量を基準に分類した3群で比較すると、業務開始前に比べて業務終了後の手掌におけるグラム陽性球菌数は、使用量が普通の群と多い群において有意(<0.05)に減少した。一方、B. cereus数は使用量の多い群において有意(<0.05)に増加した。業務開始前の手掌におけるグラム陽性...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in医療看護研究 Vol. 9; no. 2; pp. 1 - 7
Main Authors 長富, 美恵子, 麻生, 恭代, 石, 和久, 江原, 義郎, 中沢, 武司, 工藤, 綾子, 岩渕, 和久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 順天堂大学医療看護学部 2013
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1349-8630
2758-5123
DOI10.60254/jhcn.9.2_1

Cover

More Information
Summary:近年、点滴操作によるBacillus cereus血流感染が院内感染予防上の重要課題となっている。本研究では、病院業務を行う過程において、アルコールベース速乾性擦り込み式手指消毒剤を大量に使用することで、アルコールに感受性がない桿菌であるB. cereusの手掌における菌交代が起こるかを検証した。手指消毒剤の使用量を基準に分類した3群で比較すると、業務開始前に比べて業務終了後の手掌におけるグラム陽性球菌数は、使用量が普通の群と多い群において有意(<0.05)に減少した。一方、B. cereus数は使用量の多い群において有意(<0.05)に増加した。業務開始前の手掌におけるグラム陽性球菌数に基づいて被験者を分けたところ、グループⅠ(10未満)とグループⅡ(10以上100未満)の群において、業務終了後のグラム陽性球菌数が有意(<0.05)に減少していたが、B. cereus数は変化しなかったことから、手掌における菌交代は起こらないと考えられた。本研究では30秒以上の石けんと流水による衛生的手洗いを菌採取前に実施したので、B. cereusは物理的に洗い流すことが出来ないことが明らかとなった。したがって、B. cereusによる血流感染を防止するためには、点滴操作直前の手指が患者周囲の環境に触れないように環境を整え、点滴操作時の手袋使用の必要性が示唆された。
ISSN:1349-8630
2758-5123
DOI:10.60254/jhcn.9.2_1