水環境中の微生物による3種類のフタル酸エステルの生分解

プラスティック工業等で大量に使用されており、内分泌攪乱性、急性・慢性毒性、変異原性や発ガン性などの毒性を有する疑いのあるフタル酸エステル類 (PAEs) のうち、特に使用量の多いフタル酸ジブチル (DBP)、フタル酸ブチルベンジル (BBP)、フタル酸ジエチルヘキシル (DEHP) の3種類のPAEsとその主要分解産物であるo-フタル酸 (PA) の環境挙動を明らかにすることを目的として、河川水、池水、活性汚泥試料中の微生物を用いた生分解性試験を行った。生分解性は、HPLC分析によって親物質の代謝を確認する1次分解性とTOC分析によって無機化を確認する完全分解性で評価した。 いずれの試料もPA...

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Published in日本水処理生物学会誌 Vol. 41; no. 4; pp. 193 - 201
Main Authors 石垣, 智基, 清, 和成, 藤田, 正憲, 池, 道彦, 鄭, 眞淑, 牧平, 尚久
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本水処理生物学会 2005
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ISSN0910-6758
1881-0438
DOI10.2521/jswtb.41.193

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Summary:プラスティック工業等で大量に使用されており、内分泌攪乱性、急性・慢性毒性、変異原性や発ガン性などの毒性を有する疑いのあるフタル酸エステル類 (PAEs) のうち、特に使用量の多いフタル酸ジブチル (DBP)、フタル酸ブチルベンジル (BBP)、フタル酸ジエチルヘキシル (DEHP) の3種類のPAEsとその主要分解産物であるo-フタル酸 (PA) の環境挙動を明らかにすることを目的として、河川水、池水、活性汚泥試料中の微生物を用いた生分解性試験を行った。生分解性は、HPLC分析によって親物質の代謝を確認する1次分解性とTOC分析によって無機化を確認する完全分解性で評価した。 いずれの試料もPAEsに暴露されていなかったにも関わらず分解能を示したことから、PAEsの分解菌が水環境中に普遍的に存在していることが明らかとなった。実験に供したPAEsはいずれも効率的な1次分解を受け、河川水および池水試料では10 mg-TOC・l -1、活性汚泥試料では40 mg-TOC・l -1のPAEsがそれぞれ2週間以内に完全な1次分解を受けた。一方、2週間の試験期間中、完全分解率は活性汚泥試料で40-80%、河川水および池水試料では15-70%にとどまり、フタル酸モノアルキル、PA、プロトカテク酸、β-カルボキシ-cis-ムコン酸などの中間代謝物の蓄積が確認された。また、動力学解析の結果、本研究で用いたPAEsの生分解性は、1次分解性についてはDBP≥BBP>DEHP、完全分解性についてはBBP≥DBP>DEHPの順で高いものと考えられた。
ISSN:0910-6758
1881-0438
DOI:10.2521/jswtb.41.193