糖尿病と認知症

加齢とともに罹病率が増加する糖尿病と認知症の合併が注目されている.認知症の二大成因である血管性認知症vascular dementia(VD)とアルツハイマー病Alzheimer disease(AD)のうち,慢性の血管病変を合併する糖尿病においてはVDの発症が高頻度であることは従来から良く知られている.一方,集積されてきた疫学調査により,糖尿病におけるADの合併が最近注目されている.その成因としてメタボリック症候群や軽症糖尿病に認められるインスリン抵抗性と高インスリン血症が中枢神経系の低インスリン状態を惹起し,その結果,脳内へのβアミロイドの蓄積を助長してAD発症に関わる機序が提唱されている...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 99; no. 7; pp. 1678 - 1684
Main Author 横野, 浩一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 2010
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.99.1678

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Summary:加齢とともに罹病率が増加する糖尿病と認知症の合併が注目されている.認知症の二大成因である血管性認知症vascular dementia(VD)とアルツハイマー病Alzheimer disease(AD)のうち,慢性の血管病変を合併する糖尿病においてはVDの発症が高頻度であることは従来から良く知られている.一方,集積されてきた疫学調査により,糖尿病におけるADの合併が最近注目されている.その成因としてメタボリック症候群や軽症糖尿病に認められるインスリン抵抗性と高インスリン血症が中枢神経系の低インスリン状態を惹起し,その結果,脳内へのβアミロイドの蓄積を助長してAD発症に関わる機序が提唱されている.加えて,ADの進行抑制のための新たな治療として,インスリン抵抗性改善薬や脳内へのインスリン移行が顕著な点鼻インスリン療法が効果をあげている.今後は糖尿病を中心とした糖代謝分野からのADの成因や病態へのアプローチがさらなる治療法の開発につながるものと期待される.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.99.1678