保育園児のう蝕治療における医師誘発需要の検討

保育園児のう蝕治療において医師誘発需要が生じているか否かを検証することを目的に,集団歯科検診データとレセプトデータをリンケージした個票データを用いて,歯科医師密度がう蝕の治療量に及ぼす影響について検討した。分析対象は,新潟県内の24市町村における国民健康保険に加入している保育園児のうち,集団歯科検診受診後3ヶ月以内に受療した保育園児485名(レセプト820枚)である。分析は乳歯う蝕について行い,診療室で実際に治療を受けた「う蝕治療歯数」と集団歯科検診時に判定された要処置歯数との差を分析指標とした。「う蝕治療歯数」と要処置歯数を比較すると,前歯部では両者の値がほぼ等しかったが,臼歯部では「う蝕治...

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Published in医療と社会 Vol. 7; no. 3; pp. 113 - 133
Main Authors 河村, 真, 池田, 俊也, 安藤, 雄一, 池上, 直己
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 医療科学研究所 1997
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ISSN0916-9202
1883-4477
DOI10.4091/iken1991.7.3_113

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Summary:保育園児のう蝕治療において医師誘発需要が生じているか否かを検証することを目的に,集団歯科検診データとレセプトデータをリンケージした個票データを用いて,歯科医師密度がう蝕の治療量に及ぼす影響について検討した。分析対象は,新潟県内の24市町村における国民健康保険に加入している保育園児のうち,集団歯科検診受診後3ヶ月以内に受療した保育園児485名(レセプト820枚)である。分析は乳歯う蝕について行い,診療室で実際に治療を受けた「う蝕治療歯数」と集団歯科検診時に判定された要処置歯数との差を分析指標とした。「う蝕治療歯数」と要処置歯数を比較すると,前歯部では両者の値がほぼ等しかったが,臼歯部では「う蝕治療歯数」のほうが要処置歯数よりも52%多かった。さらに,「う蝕治療歯数」と要処置歯数の差を被説明変数,性・年齢・う蝕経験歯数・市町村の歯科医師密度を説明変数として,加重最小二乗法モデル・Fixed Effectsモデル・Random Effectsモデルの3種類の方法による推定を,乳歯全体・前歯部・臼歯部に対して行った結果,推定結果は乳歯全体と臼歯部では加重最小二乗法,前歯部についてはRandom Effectsモデルを用いることが望ましいと判定され,歯科医師密度はいずれのケースにおいても有意であった。すなわち,歯科医師密度の高い地域では,集団歯科検診時に判定された要処置歯数に対して,より多くの治療が行われていることが示され,保育園児のう蝕治療において医師誘発需要が生じていることが確認された。
ISSN:0916-9202
1883-4477
DOI:10.4091/iken1991.7.3_113