農業遺産地域における果樹栽培と土壌分類のオーバーレイ解析
本研究の目的は,気候変動適応を踏まえて,山梨県峡東地域における果樹栽培の環境要因の特徴を明らかにすることである。対象地域は「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」として,2022年7月に世界農業遺産に認定された。航空写真(2011年撮影)および農地区画単位(201,917区画)に基づき,8種類の栽培を分類した。地理情報システムを用いて,8種類の栽培面積(ブドウ・モモ・サクランボ・カキ・リンゴ・田・畑・その他)と6種類の土壌面積(アロフェン質黒ボク土・グライ低地土・灰色低地土・褐色低地土・未熟低地土・褐色森林土)に関するオーバーレイ解析を適用した。また,不定形な農地のポリゴンデータを定形の...
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          | Published in | 環境科学会誌 Vol. 37; no. 3; pp. 115 - 120 | 
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| Main Author | |
| Format | Journal Article | 
| Language | English | 
| Published | 
            社団法人 環境科学会
    
        31.05.2024
     | 
| Subjects | |
| Online Access | Get full text | 
| ISSN | 0915-0048 1884-5029  | 
| DOI | 10.11353/sesj.37.115 | 
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| Summary: | 本研究の目的は,気候変動適応を踏まえて,山梨県峡東地域における果樹栽培の環境要因の特徴を明らかにすることである。対象地域は「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」として,2022年7月に世界農業遺産に認定された。航空写真(2011年撮影)および農地区画単位(201,917区画)に基づき,8種類の栽培を分類した。地理情報システムを用いて,8種類の栽培面積(ブドウ・モモ・サクランボ・カキ・リンゴ・田・畑・その他)と6種類の土壌面積(アロフェン質黒ボク土・グライ低地土・灰色低地土・褐色低地土・未熟低地土・褐色森林土)に関するオーバーレイ解析を適用した。また,不定形な農地のポリゴンデータを定形のグリッドデータに分割する数値プログラムを使用して,気象や地形などの環境要因について栽培別の加重平均値を算出した。解析の結果,対象地域における面積割合は,大きい順に,モモが35.6%,ブドウが32.8%,その他が18.2%,畑が11.8%であり,4種類の栽培面積で地域全体の98.4%を占めた。ブドウとモモの栽培土壌を比較した場合,ブドウは褐色森林土の面積割合が高く,モモはアロフェン質黒ボク土や褐色低地土の面積割合が高いことがわかった。年平均気温の加重平均値は,ブドウが13.4°C, モモが13.5°C, 畑が13.3°C, その他が12.7°Cである。平均傾斜角度の加重平均値は,ブドウが4.5度,モモが3.7度,畑が4.7度,その他が7.3度である。気温上昇に伴う将来の対象地域内の植え替えを想定した場合,その他は褐色森林土の面積割合が高いため,モモよりブドウの方が適すると考えられる。しかし,その他は地形の傾斜角度が急であることを考慮する必要がある。これらの結果は,将来,気温上昇により果樹の栽培適地の変化が生じた際に学術的な基礎資料として役立つ可能性があり,持続可能な農業の実現に繋がることが期待できる。 | 
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| ISSN: | 0915-0048 1884-5029  | 
| DOI: | 10.11353/sesj.37.115 |