地方公共団体のグリーン購入—購入方針を中心とした関連取り組みの効果と限界について

本稿は,市区町村が実施するグリーン調達(環境配慮製品の優先購入)におけるグリーン調達方針の有効性と限界について,環境省が実施する市区町村のグリーン調達に関する調査データを利用して分析したものである。グリーン調達方針とは,各市区町村がグリーン調達に取り組むことを明確にするものであるが,対外的に宣言するだけである場合と,具体的な対象品目や基準を明確にする場合がある。方針の有無及び様々なグリーン調達の阻害要因のクロス集計を実施した結果,グリーン調達方針は,人的資源やマニュアルの不足等によって生じる問題を緩和する可能性が示唆された。加えて,回帰分析の結果,グリーン調達実施の宣言とグリーン調達方針の策定...

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Published in環境科学会誌 Vol. 36; no. 5; pp. 160 - 172
Main Authors 矢島, 猶雅, 有村, 俊秀, 宮本, 拓郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 30.09.2023
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ISSN0915-0048
1884-5029
DOI10.11353/sesj.36.160

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Summary:本稿は,市区町村が実施するグリーン調達(環境配慮製品の優先購入)におけるグリーン調達方針の有効性と限界について,環境省が実施する市区町村のグリーン調達に関する調査データを利用して分析したものである。グリーン調達方針とは,各市区町村がグリーン調達に取り組むことを明確にするものであるが,対外的に宣言するだけである場合と,具体的な対象品目や基準を明確にする場合がある。方針の有無及び様々なグリーン調達の阻害要因のクロス集計を実施した結果,グリーン調達方針は,人的資源やマニュアルの不足等によって生じる問題を緩和する可能性が示唆された。加えて,回帰分析の結果,グリーン調達実施の宣言とグリーン調達方針の策定は,自治体職員がグリーン調達の効果を実感する確率を高めることがわかった。しかし,グリーン調達の効果を定量的に測定する確率に対し,これらは,統計的に有意な影響が検出されなかった。また,グリーン調達の効果を実際に実感している自治体数は非常に少なく,効果の定量的な計測は難しい傾向にある。グリーン調達の効果の計測の難しさは,グリーン調達の効果の理解の難しさという課題を生じさせている可能性がある。我々の分析は,グリーン調達方針がこれらの問題を解消することは難しいことを示唆している。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.36.160