法規制によるプロジェクトマネジメントへの影響—環境・エネルギー技術に注目して

本研究は,製造企業のプロジェクトマネジャーを対象とした質問票調査から得られた161件の集計データを分析することによって,法規制がプロジェクトの成否に与える影響を実証的に明らかにした。分析の結果,第一に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,プロジェクトの規模がより拡大されやすくなることが示された。また,その規制が特に環境・エネルギー技術の開発に関するものである場合,その傾向が高まる可能性も示された。法規制の中でも環境規制は社会的性格が強く,社会的正当性が高まることでプロジェクトの規模が拡大されると考えられる。第二に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,社内での情報交換が低減し,社外での情報交換が...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in環境科学会誌 Vol. 36; no. 6; pp. 185 - 193
Main Authors 三木, 朋乃, 松嶋, 一成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 30.11.2023
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-0048
1884-5029
DOI10.11353/sesj.36.185

Cover

More Information
Summary:本研究は,製造企業のプロジェクトマネジャーを対象とした質問票調査から得られた161件の集計データを分析することによって,法規制がプロジェクトの成否に与える影響を実証的に明らかにした。分析の結果,第一に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,プロジェクトの規模がより拡大されやすくなることが示された。また,その規制が特に環境・エネルギー技術の開発に関するものである場合,その傾向が高まる可能性も示された。法規制の中でも環境規制は社会的性格が強く,社会的正当性が高まることでプロジェクトの規模が拡大されると考えられる。第二に,法規制の影響のあるプロジェクトほど,社内での情報交換が低減し,社外での情報交換が増大する傾向が示された。そして,社内での情報交換を多く行うほど,事業化の可能性が高まる傾向が示されたが,社外での情報交換による事業化への影響は特に見られなかった。つまり,法規制の影響を受けたプロジェクトの場合,マネジメントが外向きになり,そのことによって事業化に向けた社内資源の動員が進まなくなる可能性がある。一方で,分析結果は,プロジェクトの規模が拡大するほど社内及び社外での情報交換が増大する傾向も示していた。つまり,法規制の影響そのものは社内での情報交換を低減させるが,法規制はプロジェクトの規模を拡大させる影響ももつため,法規制の影響があってもプロジェクトの規模が拡大する限りは社内での情報交換が促進されることとなる。したがって,法規制の影響を受けて相対的に外部とのやり取りが増大するプロジェクトであっても,事業化に向けて社内資源と切り離さずに支援する必要性を分析結果は示唆してる。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.36.185