日本の土地利用構成のSSP別将来推移を対象とした環境影響評価—LCIA手法LIME3を用いた評価と課題

我が国の国土計画を策定する上で,将来的に予想される土地利用の推移を多面的に評価することは国土の将来像を設計する際に重要である。被害算定型LCIA手法LIME3は土地利用の維持・改変を対象とした環境影響評価が可能であるが,我が国の土地利用の将来予測を対象とした評価事例は未だ見当たらない。そこで,本報では既往研究により提示されたSSP(共通社会経済経路)別の土地利用シナリオを対象とし,その将来像ごとの構成推移による環境影響量を将来年別に試算した結果を報告する。本報による評価結果は1年間の人為的な「土地利用」の「維持」によって「一次生産」の保護対象に及ぼされる被害量を金額換算したもの(単位:US$)...

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Published in環境科学会誌 Vol. 36; no. 4; pp. 135 - 144
Main Authors 山崎, 潤也, 村山, 顕人, 吉田, 崇紘, 似内, 遼一, 真鍋, 陸太郎, Wenchao, Wu
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 31.07.2023
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ISSN0915-0048
1884-5029
DOI10.11353/sesj.36.135

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Summary:我が国の国土計画を策定する上で,将来的に予想される土地利用の推移を多面的に評価することは国土の将来像を設計する際に重要である。被害算定型LCIA手法LIME3は土地利用の維持・改変を対象とした環境影響評価が可能であるが,我が国の土地利用の将来予測を対象とした評価事例は未だ見当たらない。そこで,本報では既往研究により提示されたSSP(共通社会経済経路)別の土地利用シナリオを対象とし,その将来像ごとの構成推移による環境影響量を将来年別に試算した結果を報告する。本報による評価結果は1年間の人為的な「土地利用」の「維持」によって「一次生産」の保護対象に及ぼされる被害量を金額換算したもの(単位:US$)と解釈することができる。評価の結果,基準年となる2015年の影響量は15.1億US$,2100年の影響量はSSP1(持続可能シナリオ)で9.40億US$,SSP3(地域分断シナリオ)で6.74億US$と計算され,SSP1~5のいずれのシナリオも将来的に影響量が減少する傾向となった。影響量の内訳は建物用地のインベントリが占める割合が大きく,建物用地は人口動態に基づいて決定しているため,結果として影響量は将来的な人口減少の傾向が反映される形となった。SSP3は非持続的な将来像を想定しているが,それ故に人口および建物用地の減少傾向が相対的に大きく,SSP1よりも影響量が小さくなっていくことが示された。本報の評価は複数の仮定に基づいており,①LIME3の「一次生産」の評価において「荒地」が評価対象外となっている点,②参照した土地利用シナリオでは土地の改変期間が5年間で固定されている点を主な課題として指摘した。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.36.135