エレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析を用いた減圧残油に含まれる窒素化合物の成分分析

採取地の異なる5種の減圧残油に含まれる成分の化学構造特性に関する基礎的知見を得ることを目的とし,大慶,スマトラライト,マーバン,イラニアンヘビーおよびアラビアンミックス減圧残油についてエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI FT-ICR MS)を用い,減圧残油中に含まれる成分の分析を多段にわたるクロマトグラフィーによる前処理を排して行った。各減圧残油スペクトルの正イオンピークの精密質量値から分子式を算定した結果,いずれの減圧残油においても観測された主成分は塩基性窒素原子を一個含む化合物であり,微量成分として窒素および硫黄を一原子ずつ含む化合物も検出された...

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Published inJournal of the Japan Petroleum Institute Vol. 47; no. 5; pp. 326 - 334
Main Authors 宮林, 恵子, 辻本, 和雄, 内藤, 康秀, 三宅, 幹夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 公益社団法人 石油学会 2004
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ISSN1346-8804
1349-273X
DOI10.1627/jpi.47.326

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Summary:採取地の異なる5種の減圧残油に含まれる成分の化学構造特性に関する基礎的知見を得ることを目的とし,大慶,スマトラライト,マーバン,イラニアンヘビーおよびアラビアンミックス減圧残油についてエレクトロスプレーイオン化フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(ESI FT-ICR MS)を用い,減圧残油中に含まれる成分の分析を多段にわたるクロマトグラフィーによる前処理を排して行った。各減圧残油スペクトルの正イオンピークの精密質量値から分子式を算定した結果,いずれの減圧残油においても観測された主成分は塩基性窒素原子を一個含む化合物であり,微量成分として窒素および硫黄を一原子ずつ含む化合物も検出された。採取地による成分分布の違いを明らかにするため,得られた分子式から水素不足指数(Z 数)([CnH2n + Z NmSs+H]+)を算出し,炭素数およびピーク強度との関係を求めた。採取地に依存しZ 数の分布の中心が移動し,最大ピーク強度でのZ 数は大慶(-17)> スマトラライト(-19)> イラニアンヘビー(-21)≥ アラビアンミックス(-21)> マーバン(-25)の順に変化していることが分かり,減圧残油の採取地と検出成分の差異を初めてESI FT-ICR MSを用い観測した。得られた結果は,中国系は中東系の油と比較し,パラフィン類が多く,また中東系はより縮合度の高い芳香環が含まれる従来の報告と一致した傾向を示した。今回用いたESI FT-ICR MSは減圧残油中の塩基性窒素化合物の選択的分析に有用であり,また含まれる成分の分子式を算定し芳香環の縮合度を見積もることで,採取地に依存した減圧残油成分の組成分布を観測できることを明らかとした。
ISSN:1346-8804
1349-273X
DOI:10.1627/jpi.47.326