頭部外傷の神経病理
非穿通性の頭部外傷を, 病理学的側面から基本的な点に関してまとめた。頭蓋骨と脳硬膜との間の出血を硬膜外出血, 脳硬膜と脳くも膜との間の出血を硬膜下血腫という。前頭部を打撲し急速に頭部が動くと, 脳自体の動きは遅れ, 前頭部頭蓋骨内面が脳に接触し脳挫傷を生じる。回転や剪断力により, 脳実質軸索に障害をきたしたものを, 外傷性軸索損傷という。病変が広範だと遷延性意識障害きたす。病理学的に脳梁や脳幹背側に点状出血, 組織学的に軸索腫大を認める。反復的な外傷により, 脳内に変性疾患にみられる病理所見を生じることがある。主にプロボクサーが 10 年程経過してから, パーキンソン症候群, 認知症をきたすボ...
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Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 35; no. 3; pp. 271 - 275 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本高次脳機能学会
30.09.2015
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Subjects | |
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ISSN | 1348-4818 1880-6554 |
DOI | 10.2496/hbfr.35.271 |
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Summary: | 非穿通性の頭部外傷を, 病理学的側面から基本的な点に関してまとめた。頭蓋骨と脳硬膜との間の出血を硬膜外出血, 脳硬膜と脳くも膜との間の出血を硬膜下血腫という。前頭部を打撲し急速に頭部が動くと, 脳自体の動きは遅れ, 前頭部頭蓋骨内面が脳に接触し脳挫傷を生じる。回転や剪断力により, 脳実質軸索に障害をきたしたものを, 外傷性軸索損傷という。病変が広範だと遷延性意識障害きたす。病理学的に脳梁や脳幹背側に点状出血, 組織学的に軸索腫大を認める。反復的な外傷により, 脳内に変性疾患にみられる病理所見を生じることがある。主にプロボクサーが 10 年程経過してから, パーキンソン症候群, 認知症をきたすボクサー脳症が有名である。頭部打撃が反復的に加わるアメリカンフットボールやアイスホッケーなどのスポーツ選手にも類似の病態が知られ, 慢性頭部外傷に伴う脳症 (Chronic traumatic encephalopathy: CTE) と呼ばれる。病理学的には, タウ陽性の神経原線維変化がアルツハイマー病とは異なる分布で沈着する。 |
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ISSN: | 1348-4818 1880-6554 |
DOI: | 10.2496/hbfr.35.271 |