Bálint-Holmes 症候群と距離判断
Bálint 症候群とは, 両側頭頂-後頭葉の損傷に伴う顕著な視空間の障害であり, 精神性注視麻痺, 視覚性運動失調,視覚性注意障害といった 3 つの症状から成る。Bálint 症候群に類似する記載には, わが国の井上達二の論文や Holmes らの視覚失見当 visual disorientation がある。井上や Holmes はBálint よりも視覚認知面の障害を強調している。特に, リーチングの障害を Bálint は視覚と運動の協調の障害である視覚性運動障害と捉えたが, Holmes は距離判断の障害と捉えている。われわれは,主観的に距離判断の障害を訴える右頭頂-後頭葉の脳出血後...
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| Published in | 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 35; no. 2; pp. 214 - 220 |
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| Main Authors | , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本高次脳機能学会
30.06.2015
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| Subjects | |
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| ISSN | 1348-4818 1880-6554 |
| DOI | 10.2496/hbfr.35.214 |
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| Summary: | Bálint 症候群とは, 両側頭頂-後頭葉の損傷に伴う顕著な視空間の障害であり, 精神性注視麻痺, 視覚性運動失調,視覚性注意障害といった 3 つの症状から成る。Bálint 症候群に類似する記載には, わが国の井上達二の論文や Holmes らの視覚失見当 visual disorientation がある。井上や Holmes はBálint よりも視覚認知面の障害を強調している。特に, リーチングの障害を Bálint は視覚と運動の協調の障害である視覚性運動障害と捉えたが, Holmes は距離判断の障害と捉えている。われわれは,主観的に距離判断の障害を訴える右頭頂-後頭葉の脳出血後の 1 例に距離判断の障害を大型車や 2 種免許を取得・更新する際に用いられる距離判断の検査機種 (KowaAS-7JS1) を用いてより客観的な検査を行った。その結果, 健常群および左半側空間無視群と比較して有意な成績の低下を認めた。本症例および過去の報告例から, 距離判断の神経基盤は頭頂-後頭葉の後方, すなわち, 上頭頂小葉, 下頭頂小葉後部, 楔部にある可能性が考えられた。 |
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| ISSN: | 1348-4818 1880-6554 |
| DOI: | 10.2496/hbfr.35.214 |