2.腎保護をめざした腹水管理

肝硬変において体液貯留と腹水管理は予後を規定する重要な因子であるが,腎機能にも深く関与する.体液貯留により腎にうっ血が生じると腎臓の間質圧が上昇し,尿細管や血管が圧排によりナトリウム排泄が抑制され,腎虚血に陥る.体液量の是正に利尿剤が用いられるが,レニン・アンジオテンシン系の亢進や腎血流の低下によりさらに腎障害を呈することがある.腎臓はその特異的な血管構造によりつねに低酸素にさらされており,血流変化に弱い.肝硬変においても門脈圧の亢進や腹水の貯留により腎血行動態が変化する可能性がある.Na利尿薬のフロセミドと水利尿薬のトルバプタンでは腎血行動態に対する作用が異なる.腎血流を保持するトルバプタン...

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Published in肝臓 Vol. 58; no. 2; pp. 78 - 84
Main Authors 森, 建文, 衣笠, 哲史, 佐藤, 真一, 岩倉, 芳倫, 矢花, 郁子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2017
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.58.78

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Summary:肝硬変において体液貯留と腹水管理は予後を規定する重要な因子であるが,腎機能にも深く関与する.体液貯留により腎にうっ血が生じると腎臓の間質圧が上昇し,尿細管や血管が圧排によりナトリウム排泄が抑制され,腎虚血に陥る.体液量の是正に利尿剤が用いられるが,レニン・アンジオテンシン系の亢進や腎血流の低下によりさらに腎障害を呈することがある.腎臓はその特異的な血管構造によりつねに低酸素にさらされており,血流変化に弱い.肝硬変においても門脈圧の亢進や腹水の貯留により腎血行動態が変化する可能性がある.Na利尿薬のフロセミドと水利尿薬のトルバプタンでは腎血行動態に対する作用が異なる.腎血流を保持するトルバプタンは腎保護の観点で優れている.フロセミドとトルバプタンは利尿作用に一部共通したメカニズムを有しており,フロセミドの大量使用はトルバプタンの効果を減弱させる.したがって,Na利尿薬と水利尿薬の特性を適正に使い分け腹水管理を行うことが腎保護に求められる.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.58.78