進行性失語における臨床的特徴 ─失書の問題を中心に

進行性失語における系統的な書字に関する検討は極めて少ない。本稿では,著者が長年行ってきたMND/ALS 患者の検討を通して,書字障害に関する以下の3 点について述べてみたい。1)本邦初の失語症症例報告にある患者は脳血管障害ではなく,球麻痺症状を伴うMND あるいはALS(MND/ALS)症例であり,進行性失語としても最初の報告と思われる。2)従来,進行性失語では口頭言語に比較し書字は保たれるとされてきたが,言語機能障害のうち書字障害だけが前景となり得る。3)書字障害は単に進行性失語の部分症状であったとしても,構音障害により失語症の病像が容易にマスクされ,その際には書字障害だけが表面化するものと...

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Published in高次脳機能研究 (旧 失語症研究) Vol. 33; no. 3; pp. 318 - 323
Main Author 市川, 博雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本高次脳機能学会 30.09.2013
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ISSN1348-4818
1880-6554
DOI10.2496/hbfr.33.318

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Summary:進行性失語における系統的な書字に関する検討は極めて少ない。本稿では,著者が長年行ってきたMND/ALS 患者の検討を通して,書字障害に関する以下の3 点について述べてみたい。1)本邦初の失語症症例報告にある患者は脳血管障害ではなく,球麻痺症状を伴うMND あるいはALS(MND/ALS)症例であり,進行性失語としても最初の報告と思われる。2)従来,進行性失語では口頭言語に比較し書字は保たれるとされてきたが,言語機能障害のうち書字障害だけが前景となり得る。3)書字障害は単に進行性失語の部分症状であったとしても,構音障害により失語症の病像が容易にマスクされ,その際には書字障害だけが表面化するものと思われる。したがって,進行性失語の病像,そして主要変性部位や変性過程は,日本語特有の書字体系である仮名,漢字の障害パターンに大きく反映される可能性がある。
ISSN:1348-4818
1880-6554
DOI:10.2496/hbfr.33.318