沖縄の一農村における在宅ねたきり老人の介護パターンについて
沖縄の一農村(玉城村)において,該地区に居住するねたきり老人58人を対象に昭和53年8月から昭和54年11月までの約1年問にわたって継続調査を実施し(継続調査できた者は38人である),他出別居子やきょうだいなどの近親者を包含した拡大家族が在宅ねたきり老人の介護をめぐってどのような家族関係及び介護パターンを形成しているかを分析し,次のような結果を得た. (1)在宅ねたきり老人の約75%の者は,老人家族のみによって介護されているのではなく,拡大家族の形成を通して介護がなされている. (2) そして,その拡大家族は,主な介護者が徒歩で約15分以内,介護補助者が乗物で約30分以内に居住しているという近...
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Published in | 民族衛生 Vol. 50; no. 5; pp. 210 - 225 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本民族衛生学会
1984
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0368-9395 1882-868X |
DOI | 10.3861/jshhe.50.210 |
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Summary: | 沖縄の一農村(玉城村)において,該地区に居住するねたきり老人58人を対象に昭和53年8月から昭和54年11月までの約1年問にわたって継続調査を実施し(継続調査できた者は38人である),他出別居子やきょうだいなどの近親者を包含した拡大家族が在宅ねたきり老人の介護をめぐってどのような家族関係及び介護パターンを形成しているかを分析し,次のような結果を得た. (1)在宅ねたきり老人の約75%の者は,老人家族のみによって介護されているのではなく,拡大家族の形成を通して介護がなされている. (2) そして,その拡大家族は,主な介護者が徒歩で約15分以内,介護補助者が乗物で約30分以内に居住しているという近住性を前提として形成されている. (3) また,拡大家族内における介護パターンは,同居の配偶者や嫁を主な介護者とし配偶者主導型や嫁主導型の介護パターンが多く見られ,拡大家族の成員による協働の介護パターンが一般的である. (4)なお,娘主導型の介護パターンは一般的ではないが,さりとて該地区の介護パターンは欧米におけるfamily system of careが女系によって体系化しているのと対照的に,男系によって確立してはいない. (5)家族関係及び拡大家族関係は良好な関係が維持されている者が多く,しかも,それらの関係間には相関が見られる. なお,本研究とともに進めた,(1)在宅ねたきり老人の出現率(宮城,1984b),(2)「ねたきり状態」の評価,(3)在宅ねたきり老人の寝室利用の状況については別途に報告する. |
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ISSN: | 0368-9395 1882-868X |
DOI: | 10.3861/jshhe.50.210 |