栄養塩類変動が内湾の生態系・生物生産に及ぼす影響:大阪湾
海域の全窒素 (TN) ・溶存無機態窒素 (DIN) が大きく低下した大阪湾において, 生態系の栄養段階ごとに生物量の経年変化および季節変動パターンの変化を調べた。調査期間の1990~2019年には, 経年的水温上昇はほとんどなかった。DINの低下に伴って, 一次生産量が減り, クロロフィルで測った植物プランクトン量が減り, これが繊毛虫・カイアシ類などの動物プランクトンの減少, 仔稚魚量の減少へと連動していた。生態系全体としては, 各栄養段階の現存量がほぼ線形的に応答するボトムアップのシステムとなっていた。TNの低下が, DINの枯渇期間を夏のみから, 春から夏に広げ, これによる一次生産量...
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| Published in | 水環境学会誌 Vol. 45; no. 3; pp. 145 - 158 |
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| Main Authors | , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
公益社団法人 日本水環境学会
2022
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| Subjects | |
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| ISSN | 0916-8958 1881-3690 |
| DOI | 10.2965/jswe.45.145 |
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| Summary: | 海域の全窒素 (TN) ・溶存無機態窒素 (DIN) が大きく低下した大阪湾において, 生態系の栄養段階ごとに生物量の経年変化および季節変動パターンの変化を調べた。調査期間の1990~2019年には, 経年的水温上昇はほとんどなかった。DINの低下に伴って, 一次生産量が減り, クロロフィルで測った植物プランクトン量が減り, これが繊毛虫・カイアシ類などの動物プランクトンの減少, 仔稚魚量の減少へと連動していた。生態系全体としては, 各栄養段階の現存量がほぼ線形的に応答するボトムアップのシステムとなっていた。TNの低下が, DINの枯渇期間を夏のみから, 春から夏に広げ, これによる一次生産量の低下が, 上位栄養段階への窒素フローを減らしたと考えられた。また, 仔稚魚では, 内湾性魚種はどの優占魚種も生物量が大きく減少していた。一方, 広域回遊性のカタクチイワシだけは減らず, この一種のみが優占する状態に変化していた。 |
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| ISSN: | 0916-8958 1881-3690 |
| DOI: | 10.2965/jswe.45.145 |