当院における大腿骨近位部骨折術後患者の退院先と歩行能力の動向

【はじめに】  大腿骨近位部骨折は高齢者に好発し、年々増加の傾向を示している。本症の身体機能改善は長期間を要するため、在院日数短縮化している急性期では、他病期施設との連携の必要性が求められる。このため急性期での術後患者の動向を明確化していくことは、入院中のリハビリテーションや退院時調整を行う上で極めて重要と考えている。以下に当院における大腿骨近位部骨折術後患者の動向について、受傷前後での生活環境と歩行能力に着目して報告する。 【対象】  2009年 4月から2010年 12月に当院にて大腿骨近位部骨折のため観血的治療を実施した65歳以上の高齢者161名(男性 33名、女性 128名、平均年齢...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2011; p. 201
Main Authors 杉木, 知武, 岸本, 進太郎, 辛嶋, 良介, 田中, 泰山, 川嶌, 眞人, 奥村, 晃司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2011
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2011.0.201.0

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Summary:【はじめに】  大腿骨近位部骨折は高齢者に好発し、年々増加の傾向を示している。本症の身体機能改善は長期間を要するため、在院日数短縮化している急性期では、他病期施設との連携の必要性が求められる。このため急性期での術後患者の動向を明確化していくことは、入院中のリハビリテーションや退院時調整を行う上で極めて重要と考えている。以下に当院における大腿骨近位部骨折術後患者の動向について、受傷前後での生活環境と歩行能力に着目して報告する。 【対象】  2009年 4月から2010年 12月に当院にて大腿骨近位部骨折のため観血的治療を実施した65歳以上の高齢者161名(男性 33名、女性 128名、平均年齢 84.9±7.1歳)である。術式は人工骨頭置換術 38名、観血的骨接合術123名(CCS、γネイル、CHS、エンダー釘)であり、各々当院術後クリティカルパスにて、術翌日より早期離床と歩行訓練、ADL動作訓練を中心とした理学療法および作業療法を実施した。術後平均在院日数は 23.4日( 4-56日)であった。 【方法】  当院入院期間中の経過を大分県北部地域で運用している地域連携パスに記載した。その資料より性別、受傷時年齢、受傷前と退院時歩行能力、受傷前と退院後生活環境(自宅・施設・病院に分類)、合併症、術式、術後離床、起立・歩行訓練開始までの日数と術後在院日数を集計した。なお歩行能力は、独歩・T杖歩行 3点、歩行器・シルバーカー歩行 2点、伝い歩き・介助歩行 1点、車椅子・床上 0点と点数化した。  統計学的処理は、術前後の生活環境と歩行能力は各々χ2検定を用い、受傷前後の歩行能力はWilcoxonの符号付順位検定を用いた。退院時歩行能力による術式、離床・起立・歩行開始、術後入院日数、退院後生活環境をKruskal-Wallis testとSpearmanの順位相関係数を用い、各々有意水準5%未満にて行った。 【結果】  退院先は、受傷前施設または病院であった 56名中50名( 89.3%)は入院前と同様の生活環境であったが、受傷前自宅であった105名中 71名が施設または病院へ生活環境が変化、特に他院への転院が有意に多かった(φ= .64、p= .00)。歩行能力は受傷前平均 2.38が退院時平均 1.03と有意に低下していたが(p= .00)、歩行能力の推移は受傷前歩行能力により異なり、受傷前 2点では 0点と有意に低下、受傷前 3点では 2点への有意な低下と3点のまま有意な差を認めなかった(φ= .46、p= .00)。また、退院時歩行能力は年齢、受傷前生活環境、受傷前歩行能力、立位・歩行訓練開始日数、術後入院日数、退院後生活環境に有意な差(p< 0.05)と相関関係を認め(r=± .195~ .435、p= .00)、退院時歩行能力が高いものは、受傷前の活動性が高く、早期の立位訓練開始が可能であり入院日数が長いことが示された。 【まとめ】  当院における大腿骨近位部骨折術後の推移は、受傷前の生活環境と歩行能力によって退院時生活環境と歩行能力に一定の傾向が示唆された。本調査結果をもとに入院早期より患者・家族への情報提供を行うとともに地域連携による情報共有の必要性が再認識された。
Bibliography:201
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2011.0.201.0