ホットパックの使用方法が表面温度にあたえる影響

【はじめに】  ホットパック(以下HP)は,伝導熱を利用した物理療法の中で最も利用頻度が多く,伝導法としては湿熱と乾熱の2つに分類される。湿熱は,生体への熱伝導率が乾熱より優れているため,当院でも治療の前処置などの目的で湿熱を用いている。しかし,湿熱は,水分の気化などの要因によりHP除去後の皮膚表面温度が乾熱よりも早く低下する。また,湿熱は使用するタオルの枚数も乾熱に比べ多いため,数量が多い場合,効率的な方法とはいいがたい。そこで,本研究は,簡易的な包装方法の湿熱HP(以下新HP)と従来のタオルのみで包装するHP(以下旧HP)の皮膚表面温度の変化を比較し,その有用性を検討することを目的とした。...

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Published in九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 Vol. 2007; p. 156
Main Authors 上川, 優子, 宮崎, 麻衣子, 上川, 浩樹, 寺田, 和彦, 衣川, 英和, 渡邉, 真由美, 川原, 春香, 林田, 健, 吉田, 大輔, 中川, 浩, 太田, 裕香
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州理学療法士・作業療法士合同学会 2007
Joint Congress of Physical Therapist and Occupational Therapist in Kyushu
Subjects
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ISSN0915-2032
2423-8899
DOI10.11496/kyushuptot.2007.0.156.0

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Summary:【はじめに】  ホットパック(以下HP)は,伝導熱を利用した物理療法の中で最も利用頻度が多く,伝導法としては湿熱と乾熱の2つに分類される。湿熱は,生体への熱伝導率が乾熱より優れているため,当院でも治療の前処置などの目的で湿熱を用いている。しかし,湿熱は,水分の気化などの要因によりHP除去後の皮膚表面温度が乾熱よりも早く低下する。また,湿熱は使用するタオルの枚数も乾熱に比べ多いため,数量が多い場合,効率的な方法とはいいがたい。そこで,本研究は,簡易的な包装方法の湿熱HP(以下新HP)と従来のタオルのみで包装するHP(以下旧HP)の皮膚表面温度の変化を比較し,その有用性を検討することを目的とした。 【対象】  対象は,神経学的所見を有さない健常人21名(男性9名,女性12名)とし,平均年齢29.3±7.9歳,BMI22.7±2.3_kg_/_m2_であった。また,全対象者には,本研究の趣旨を説明し同意を得たうえで測定を実施した。 【方法】  旧HPのタオルは,7枚重ねとした。新HPは,ウレタン製の袋状カバー(鈴木医療器製ニューホットパックカバー)にHPを入れ,タオルを2枚重ねた。HPは,腹臥位の腰部の皮膚表面上に直接適用させた。測定時間は,5分安静後に20分間実施した。皮膚表面温度は,L2/3の最長筋上をThermometerと62MINI IR Thermometerを用いて測定した。測定値は,2分毎にHPを当てている状態で読み取った。また, HP除去後も2分毎に10分間継続して測定した。統計学的分析には,対応のあるt検定,対応のないt検定を用い,危険率5%未満をもって有意とした。 【結果】  HP除去後から10分後までの皮膚表面温度の低下は,新HP39.0±0.6℃,35.8±0.9℃に比べ旧HP38.8±1.0℃,35.5±1.0℃が有意に低下していた。新HPは,安静時34.8±0.7℃と除去10分後35.8±0.9℃の皮膚表面温度に有意な差を認めた。新HPと旧HPの適用時20分間の皮膚表面温度変化においては,有意な差は認められなかった。 【考察】  新HPと旧HPの適用時温度と皮膚表面温度の経時的変化を調査し,その有用性を検討した。その結果,新HPは,旧HPに比べ除去後から10分後の皮膚表面温度が有意に高く,温熱効果がより継続していることが考えられた。HP適用時は同等の温熱効果であったが,新HPは皮膚表面温度の観点から,除去後時間が経過した場合でも温熱効果を有していたと考えられた。しかし,今回は皮膚表面温度の変化のみの検討であったため,今後は末梢血流量などの変化も検討する必要がある。
Bibliography:027
ISSN:0915-2032
2423-8899
DOI:10.11496/kyushuptot.2007.0.156.0