サンゴ礁の栄養塩ダイナミクス

サンゴ礁が分布する熱帯・亜熱帯域は栄養塩濃度が著しく低く,継続的な観測地点も少ないため,その挙動を理解するには未だ研究の余地がある。塊状の造礁サンゴの骨格は樹木のように年輪を形成し,その地球化学分析によって低緯度域での栄養塩挙動を高時間解像度で復元することができる。本稿では,造礁サンゴ骨格の栄養塩指標であるバリウム/カルシウム比,カドミウム/カルシウム比,リン/カルシウム比,窒素同位体比の開発の履歴とその特徴を紹介し,これまで明らかになってきたサンゴ礁への栄養塩の起源とその時空間変化をまとめた。また,先行研究による造礁サンゴの窒素同位体比分布と硝酸濃度の分布を比較した結果,亜熱帯循環の縁辺部と...

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Published in日本サンゴ礁学会誌 Vol. 24; no. 1; pp. 29 - 45
Main Author 山崎, 敦子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本サンゴ礁学会 2022
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ISSN1345-1421
1882-5710
DOI10.3755/jcrs.24.29

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Summary:サンゴ礁が分布する熱帯・亜熱帯域は栄養塩濃度が著しく低く,継続的な観測地点も少ないため,その挙動を理解するには未だ研究の余地がある。塊状の造礁サンゴの骨格は樹木のように年輪を形成し,その地球化学分析によって低緯度域での栄養塩挙動を高時間解像度で復元することができる。本稿では,造礁サンゴ骨格の栄養塩指標であるバリウム/カルシウム比,カドミウム/カルシウム比,リン/カルシウム比,窒素同位体比の開発の履歴とその特徴を紹介し,これまで明らかになってきたサンゴ礁への栄養塩の起源とその時空間変化をまとめた。また,先行研究による造礁サンゴの窒素同位体比分布と硝酸濃度の分布を比較した結果,亜熱帯循環の縁辺部と内側では窒素同化と窒素固定がそれぞれ盛んに起こっており,栄養塩の供給源に違いがあることがわかった。さらに造礁サンゴ骨格の窒素同位体比から明らかになった北太平洋亜熱帯循環の西側縁辺部である黒潮流域の栄養塩供給の履歴とそれに伴う沿岸環境の変動を示した。
ISSN:1345-1421
1882-5710
DOI:10.3755/jcrs.24.29